君へ。―つたえたい気持ち三十七話 (ダ・ヴィンチブックス)

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レビュー : 99
FS読書部さん カズハ読了本   読み終わった 

コミュニケーションをテーマにした三十七の著名作家による超短編アンソロジー。小説ありエッセイありで、「白紙」「朝日が向かっています」などの作品はもっと書きこまれたものを読んでみたいと思った。逆に短さが良い味になっていたのが藤沢周「教えない」。
ラストを飾る乙一はこの短さでも抜群の存在感を誇っている。
死の手段を考えている最中に届く、ぶどうパン感激のメール。
“パソコンケーブルの向こう側にこんなアホな人がいるというのに死ねるわけがなかった”
勿論字面通りに呆れはあったのだろう。しかしこの時作者に響いた衝撃の正体は、文字の向こうに予測のつかない感情と行動を持つ生きた人間がいるという実感だったのだと思う。殆ど死の世界に引っ張られていた作者の中に、パソコンケーブルを通じて“生者”が侵食してくる。その仮想と生身の交錯が、一見呑気とも見えるこの一文にのせられているのが良い。侵食は必ずしも苦痛ではないのだ。
また大林宜彦「賢者の自由」に見られる老父の言葉も印象的。
“自由を不自由に使ってこそ人間”
作中では主に表現の自由をさして使われている。ネットの普及に伴い、肥大した自由を振りかざしての書きこみが激増している今、誰しもに必要な言葉だと思う。
最低限の制約を以て贅肉を削いでこそ、自由は美しい。
(カズハ)

レビュー投稿日
2016年5月29日
読了日
2016年5月28日
本棚登録日
2016年5月29日
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