兵士は起つ: 自衛隊史上最大の作戦 (新潮文庫)

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著者 :
over45さん ノンフィクション   読み終わった 

有川浩氏の解説「抑制された筆が掘り起こす覚悟」の書き出しの一文
「これほど強い意志に貫かれた原稿は他に知らない。」

他の「兵士」シリーズには、少しの明るさがあったように思うのだが、この作品ではそれもない。ただただ圧倒されるばかりであった。

以下、長いけど引用。知っておいてほしい。

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P.287
もう半世紀以上も昔の話だが、のちのノーベル賞受賞日本人作家が、彼と同じ年頃の防衛大学校生を捉えて、『ぼくは防衛大生をぼくらの世代の若い日本人の一つの弱み、一つの恥辱だと思っている』と、およそ一級の文学者とは考えられないような、相手の人格をも全否定する、薄汚い蔑みの言葉を投げつけたことがあった。さらにこの作家は止めの一撃のようにして、『そして、ぼくは、防衛大学の志願者がすっかりなくなる方向へ働きかけたいと考えている』と書きとめたのである。きらめくばかりの才能に溢れ、「戦後民主主義」のスター的存在だった若き作家の容赦ない言葉は、いまでは考えられないほどの大きな影響力をもって社会に広がり、それでなくても風あたりが強かった自衛隊への逆風をますます強めて、当時の防衛大生に限らず多くの自衛隊員とその家族に心の棘となって突き刺さった。
言葉にした本人はとうに忘れてしまったのかもしれないとしても、言われた人々は、言われた言葉をずっと忘れない。
それもまた言葉の力である。そのことに代表されるように、自衛隊は戦後長らく「日陰者」として不当な扱いを受けつづけ、戦争放棄といっさいの軍備の否定を掲げた「憲法九条」があれば日本の幸福は守られると信じ切っていた、マスコミの冷たい視線にさらされてきたのである。だが、その『恥辱』とされた自衛隊のヘリが被爆の危険を冒して原発に海水を投下する模様がNHKHによって全国に生放送され、それを日本人の多くが見つめていたこの瞬間は、自衛隊が、はじめて圧倒的多数の国民から、日本人と日本を守ってくれる〈最後のとりで〉として認知され、心から頼りにされた瞬間だった。
震災後、ノーベル賞作家は、脱原発の旗手となった。
しかし、あの三月の、この瞬間、原発の暴走を食い止めるためフクシマの最前線に、彼がいみじくも『ぼくらの世代の…一つの恥辱』と吐き捨てた防大生の後継者たる自衛隊員たちが、未曾有の危機の前に身を挺して立ちはだかったことについて、思想信条を越えた感謝のしるしとして「ありがとう」や「ご苦労さま」の言葉を彼ら隊員にかけることはなかった。まるでいまも「日蔭者」として自衛隊の存在など、この老作家の眼には入っていないかのように……。
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もうひとつ。本書ではこういう場面はなかったが…
「大震災の時に避難所にいると「俺だって家族が見つからないんだよ!」と叫び声。近づくと自衛隊員がしゃがみ込んで号泣していて…」
http://oniyomediary.com/archives/44695023.html

レビュー投稿日
2015年9月28日
読了日
2015年9月28日
本棚登録日
2015年9月13日
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