いかにもコクトーらしい、芝居がかった物語。
出てくるキャラクターは芝居の一登場人物として、役割を演じるためだけに付けられたパーソナリティであり、人物としての深みを感じさせるものではない。コクトーは物語という形式ではあるが詩情にその重点を置いている。
芝居には詳しくないので上手くは言えないが、芝居を見に来た観客を煽るような文体だった。読みにくい、かもしれない。一語一語に力と意味があり、さらさらと読み進めるには随分と濃い文章だったと思う。
「恐るべき子供たち」にもあったコクトー独特の死に対する無邪気な興味みたいなのが本作品でも強調されていて、主人公のトマはどうしても死を悲壮なリアリティーあるものとしてとらえられない。そこでトマは無邪気に死と戯れ、死を知らぬまま死ぬことになる。戦場はそのような人間の死に対する感情を鈍化させるような舞台として一役買っていたのではないか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2013年2月26日
- 読了日 : 2013年2月26日
- 本棚登録日 : 2013年2月8日
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