その問題、経済学で解決できます。

  • 東洋経済新報社 (2014年8月29日発売)
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子供に勉強のやる気を起こさせるためにはどうしたらよいだろう。
寄付金をより多く集めるにはどうしたらよいだろう。
新車を安く買うためにはどうしたらいいだろうか。
訪問販売でより多く売るためにはどのようにしたらよいだろうか。
社員のパフォーマンスを上げるためにはどうしたらよいだろうか。

こんな疑問は日常生活でもよく考えると思う。
これらに対する回答は、昔ながらの迷信や習慣ではなく、科学ー特に実験に基づく行動経済学ーによって与えることができるし、そうあるべきである。

最近はビッグデータという手法が流行っているが、こちらは非常に大きい(ビッグ!)データ群から相関関係を主とした分析を行う。ここで注目してほしいのは、因果関係ではなく、相関関係であるということだ。
悲しいかな、人間は相関関係と因果関係を混同しやすいらしい。
たとえば、ある広告代理店のCEOが、広告をTVで流した量とその売上げの正の相関を証拠として、「どうだ!広告を流せば流すだけ売り上げが伸びているぞ!」ということができるだろうか。
一方で、夏時期にアイスクリームの売り上げと溺れる子供の量のグラフ(こちらも正の相関だ!)をみて、アイスの売り上げが多い年に、子供にプールに行かせることを禁止する親がいるだろうか?
実は、両者とも本質は全く同じだ。つまり、相関はあるけれども因果関係は必ずしもイコールではない、ということである。
(ネタバレだが前者は、たまたま広告を流した時期がクリスマス的な売り上げが伸びる時期であるため広告と売り上げの因果関係があると錯覚した例で、後者は暑くなるとアイスを買う人とプールや海に行く人が増えるので相関がある、というだけの話だ)

ということもあり、真に因果関係を調べたい場合は、従来のよく整備された実験環境を構築して、対照群と比較して検討する必要があるのだ。
一昔前は、大規模に実験する環境、資金、アイデアがなかったので困難であったが、ここ最近の実証経済学の流行をうけて大規模な社会実験も可能となってきたらしい。

本書に記載されている例として、子供成績を上げたいと思うのはほとんどすべての親御さんの願いであろう。
この場合、どのようにしてやる気を出させるのがもっとも有効であろうか。
物でつる場合と、お金そのものズバリを上げる方法がまず考えられるが、物を上げる場合も本質的にはお金を上げることと等価なので、お金という尺度で実験をしてみる(小さい子供は、お金よりもおもちゃの方が喜ぶだろう!というご指摘はもっともである。これについても本書では研究成果を披露しているので本書参照)

1)何もしない(これがベースとなるので比較対照群)
2)事前に1000円あげておいて、前の成績よりも下がったら1000円を没収する
3)事後に、成績が上がった場合に1000円をすぐにあげる
4)事後に、成績が上がった場合に1000円を少し時間を空けて(1か月等)あげる

この4つのケースで成績があがったのはどのケースでしょうか?
1つだけ劇的に上がったケースがあります。
詳しくは本書で。


また社員のパフォーマンスを上げる問題についても同様に実験した結果が披露されている。
こちらは個人でインセンティブを与える場合と、チームとしてインセンティブを与える場合とで結果が異なるという興味深い結果が得られたそうだ。
詳しくは本書で。


というように、このようなテーマは普遍性があり、知っていると意外と役に立つことがあるかもしれない。
お勧めできる一冊である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス
感想投稿日 : 2016年2月19日
読了日 : 2016年2月19日
本棚登録日 : 2016年2月3日

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