ゴジラ (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房 (2004年11月11日発売)
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感想 : 3
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1954年公開の日本初の本格特撮怪獣映画『ゴジラ』の基本シナリオを手掛けた小説家、香山滋が自ら映画脚本を元に児童向け冒険小説として新たに書き起こしたノベライズ作品で、続編の『ゴジラの逆襲』も≪大阪編≫として収録しされ1955年7月、冒険活劇小説として島村出版より『ゴジラ』として初刊行された。この作品は1979年に再度、奇想天外出版より復刻され、2004年11月、三度目に筑摩書房 より、ちくま文庫として刊行されたのが本書である。
文庫化にあたって新たに香山が「日本探偵作家クラブ会報」に数回にわたって寄稿した映画『ゴジラ』にまつわるトーク&エッセイ、そして映画完成シナリオを「オリジナル」として収録している。さらにボーナスノベルとして『ゴジラ』基本シナリオとほぼ並行して随筆され「S(スノーマン)作品」というもう一つの怪獣作品として書き上げられ、1955年に公開された東宝特撮怪奇映画『獣人雪男』の基本プロットを「小説サロン」にて1955年8月号から10月号まで連載された小説を『ノベライズ版・獣人雪男』として収録。単行本は東方社より同年9月20日発行されていたが、長らく絶版となっていた。
ノベライズ版では滅びゆく生物である雪男が女性を次々に誘拐する理由が繁殖を意図していたというの映画では描かれていない描写があり、生存を賭けた生物的苦悩と≪滅びゆく者達≫の悲痛なシチュエーションが具体的に盛り込まれている。
映画作品では舞台となる「部落」という差別用語とその扱いや、昭和初期に見受けられた寒村における閉鎖的な村民の描写(脚本では近親婚を繰り返した結果、障害者が多いという表現)等、後の東宝社内での倫理的作品規制により「公序良俗に反する作品」として封印され、ビデオ化もされていない幻の映画作品となり、ノベライズが復刻収録されているのはまさにファンに取っては狂喜乱舞!であり、秘境冒険作家「香山滋映像化作品集」としても貴重な一冊となっている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノベライズ
感想投稿日 : 2013年8月31日
読了日 : 2013年1月18日
本棚登録日 : 2013年1月18日

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