海山のあいだ (中公文庫)

  • 中央公論新社 (2011年3月23日発売)
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感想 : 4
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言葉もろくに通じず、特に親しいわけでもないオーストリア人との山行を淡々と描いた『羅臼岳』の最後のシーンがとても好き。

"声に出すと、何かが終わってしまうような気がしてならない。たぶん、同じ思いであったのだろう、私たちはともにソッポを向き合ったまま、しばらくのあいだ茫然と山頂の岩陰に座っていた。"

素晴らしい風景を目にした時、『きれい』とか『すごい』とか、そんな言葉で簡単に片付けてほしくないと思うことがある。ただ黙って、言葉にできない世界を全身でじっくりと味わっていたい。そんな時の感覚が自分と同じで、とても気に入った。

『登山』の本というより『山』についての本。もう少し年を重ねたら、こんなふうに味わい深く山と付き合えるようになりたい。

読書状況:積読 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ・コラム
感想投稿日 : 2012年8月25日
本棚登録日 : 2012年8月25日

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