ミケランジェロ (講談社学術文庫)

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  • 講談社 (1991年4月1日発売)
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3

イコノロジーの手法による絵画のテーマについての探究を踏まえつつ、そうしたテーマを選び取るに至った芸術家の個性的なドラマに迫る試み。

著者は「ドーニ家の聖家族」を手がかりに、ミケランジェロとレオナルド・ダ・ヴィンチとの対決を解き明かしている。当時のフィレンツェの芸術家たちは、フィチーノの新プラトン主義の思想から大きな影響を受けている。フィチーノはプラトンの『饗宴』で語られている、人間が二つに分かたれることで男女が生まれ、互いが元の半身を求めるようになったというミュトスに、独自の解釈を施した。プラトンがこのミュトスによって語ろうとしたのは、男女や同性の間に生じる「愛」の起源だった。だがフィチーノは、二つに分かれた人間は対等ではなく、魂の超自然的な光と自然的な光の二つに分けた。そして、自然的・肉体的な存在は超自然的な光を追い求める存在であり、これこそが神を「愛」する人間を意味すると考えたのである。つまり彼は、このミュトスに語られている「愛」をギリシア的なものからキリスト教的なものへと読み替えたのである。

著者はレオナルドの絵画を読み解くことで、彼の作品がフィチーノの思想よりもギリシア的な「愛」を表現するものだったことを明らかにしている。レオナルドは何よりも男性の同性愛に理想的な「愛」の形を見たのであった。これらの作品を目にしたミケランジェロは、キリスト教的な「愛」を表現することで、レオナルドとの対決をおこなった。「ドーニ家の聖家族」の後景は、プラトン=レオナルド的な人間の至福を表現し、これを乗り越えるフィチーノ的な超自然的光を求める魂を聖母と聖ヨハネのまなざしによって示そうとしたのである。

さらに著者は、若きミケランジェロの作品の中に、ディオニュソス的な「若さ」と父の影を宿す「老人」との戦いを見て取り、また「ユリウス二世墓廟」「システィナ礼拝堂」「メディチ家礼拝堂」の3作品に、西洋思想における「四大元素」のテーマと、それらを統合する原理へと向上する志向を読み取っている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文庫版
感想投稿日 : 2013年2月12日
読了日 : -
本棚登録日 : 2013年2月12日

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