フィギュアスケート王国ロシア (ユーラシア・ブックレット No. 86)

著者 :
  • 東洋書店 (2006年2月5日発売)
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トリノ五輪直前に刊行されたリーフレット。
何故、ロシア勢は強いのか。その栄光と過去。
そして疑惑のソルトレイクシティー五輪のアイスダンスについて頁を割いている。



ずっと読んでみたいと思っていた。
それはバンクーバーが始まる前から。

そして、バンクーバー後に思ったのだった。
本当にアメリカは今でもロシアに対する感情は良いものではなく、
人々の心の中には冷戦の残像が燻っているのだと。

プルシェンコの演技に惹かれて各国の中継映像を見るのだが
カナダの放送なんて聞くに耐えないくらいだった。
(言語を理解できなくても、言い方が全てを物語るのだ)

そして、銀メダル。
最初は日本の放送の印象から「悪かった」と思ったけれど
もし、彼の顔を違う別の誰かにすげ替えたら、間違いなく金メダルだと思った。
もちろん彼の演技が金メダリストのそれであったら、納得の金メダル、と言われただろう。

振り返ってみれば、やはり、「絶対王者エフゲニー・プルシェンコ」の印象が人々の中に強くあって、それを超えるだけの演技が出来なかったのだ。(それは国家間の対立抜きにして思うことなのだが)


閑話休題。
この本のなかでは、疑惑のソルトレイクシティのことについての記述が
内容も他よりも濃く、著者が最も書きたかったことなのだろう。
しかし、当然ながら疑惑は疑惑のままで変わらない。

ただ一つ確かなのは、当事者の横でこの騒動を見ていたプルシェンコは
自分もまた同じようにその対立に巻き込まれてしまったこと、
そして巻き込まれざるを得なかった自分の実力を痛感したのだろうと思う。


いつも圧倒的な力で勝ってきた人が、ああいう演技では
どうしたって、かつての当人の演技と比較してしまう、無意識にでも。
観客の心を掴んでいたし、大きなミスが無くても、大技を決めていても。

ジャンプの配点、それにストレートラインステップのレベルとか
いろいろ納得できないことはあるけれど、それはまた別の機会に。


スルツカヤの、「私がアメリカ人なら違ったのだろうけれど」というコメントを見てスポーツ選手は否が応にも国家を背負わなければならない運命なのかと感じた。
リンクで燦然と輝く笑顔の裏には、いろんなことが渦巻いているのだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2011年12月22日
読了日 : -
本棚登録日 : 2011年12月22日

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