贅肉をそぎ落としたような淡々とした文章で、壮絶なことを語り、ぞくりとさせてくれるような作品はもはや珍しいものではないと思うけど、これに比べたらそういうものの多くの底の浅さが見えてしまうほど、まさに「極限に乾いた筆致で読者の胸をえぐる文学」というジャンルでもあればその頂点に君臨してしまうのではないかと思われるアゴタ・クリストフ女史の、一文字たりとも無駄のない小説。「悪童日記」だけでも十分すごいのに、三部作をすべて読み終えてからまたこの一作目を読み返してみると、埋もれていた真実の前に、途方もない孤独を感じさせられてさらに驚愕。
これが十分な教育を受けた事もないままに異国に亡命してきた作者が、母国語ではない言葉で生み出したものだとは…。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
長編小説(海外)
- 感想投稿日 : 2010年3月31日
- 読了日 : 2009年8月15日
- 本棚登録日 : 2009年8月15日
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