坂口安吾 [ちくま日本文学009]

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レビュー : 44
著者 :
koyajさん 本・雑誌   読み終わった 

収録作品<br />・風博士 ☆<br />・村のひと騒ぎ ☆<br />・FARCEに就て ☆<br />・石の思い ☆☆<br />・風と光と二十の私と ☆☆☆<br />・勉強記 ☆☆<br />・日本文化私観 ☆☆☆<br />・堕落論 ☆☆☆<br />・続堕落論 ☆☆☆<br />・白痴 ☆☆☆<br />・金銭無情 ☆☆☆<br />・湯の町エレジー ☆☆<br />・高千穂に冬雨ふれり ☆<br />・桜の森の満開の下 ☆☆☆☆☆<br /><br /><br />日本に関するエッセイ群は、そのまま読むと違和感を禁じえないが、時代性を考慮すると中々興味深い指摘である。日本という国の合理性を尊ぶ姿勢をひたすら説明していた。<br />日本古来のものが良いとは限らず、日本人が洋服を着たければ着ればいいし、和服も欧米人のほうが似合うかもしれない。日本人は日本人らしさなど気にせずとも、おのずから日本人であるということ述べ、神社仏閣が消え去ろうと、生活に支障はなく、電気が止まった方がよっぽど困るのだから校舎を重視するのが健全であるとした。安吾はその著作の中で、そういった日本人の建前や美学よりも実際性を尊重する(堕落)姿勢を繰り返し評価している。<br /><br />白痴はなんだかわからないが読んでしまった。安吾は白痴を、魂のないものとして、欲望の権化、あるいは動物的なものの象徴として描いている。物語の中で、主人公の白痴に対する視線が、戦争という大破壊による哲学の変化につれて二転三転する様は面白かった。<br /><br /><br />桜の森の満開の下は、山賊と美女と桜をめぐる大人向けの童話である。昔桜は人を狂わせるものとして畏怖の対象であったと設定し(真偽は不明)、ただ桜のみを恐れる屈強の山賊と、彼に夫を殺され娶られた美女の話。なんだか良くわからないまま終ったが、血生臭く不気味な内容であったにもかかわらず、情景描写が美しいためか、不思議と後味は悪くなかった。抽象的というか心象的な物語だが、エンタメとしても上質であり、安吾の才能を感じさせる。個人的には安吾はこっち方面でもっと作品を残して欲しかった。

レビュー投稿日
2009年6月30日
読了日
2009年6月30日
本棚登録日
2009年6月30日
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