「F」というイニシャルでしか呼ばれなかった少年が、何人かの人々に強い記憶と残していったものを追う4編のサスペンス・ドラマ。針金のように痩せて、くしゃくしゃした縮れ毛と片方だけ吊りあがった眉と目。強い印象を残す外観にも係わらず、誰の記憶の中にも本名が浮かび上がらない奇妙な少年。それが「F」だ。 冒頭に置かれた「右手」と題するストーリーは、初出時の掲載誌(「野性時代」)を考慮しても暴力描写が強烈で、とてもこれまでの知的でほのぼのとした吉永作品とは異なった印象。いわば、これまでと違う路線を狙ってみたというところだろうが、意外な一面を見せてもらった気分。まるで男性作家のような書きっぷりだ。最後の一編で、「F」のその後が描かれる。
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- 感想投稿日 : 2011年4月21日
- 読了日 : 2011年4月21日
- 本棚登録日 : 2011年4月21日
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