“島”に戦争が来た

  • 新潮社 (2010年7月30日発売)
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本棚登録 : 24
感想 : 6
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この小説は、太平洋戦争に巻き込まれた「<島>=八丈島」の物語だ。三章建ての構成なのだが、第一章は<島>の創世記を語るまるで叙事詩のようなもの。そして第二章はこの小説の本題で、<島>の若い娘・キヨと朝鮮半島から徴用され強制労働をさせられている若者・インスの秘められた恋を描く。第三章は戦後64年を経た<島>を、何者かに導かれるように取材する女性カメラマンの視点で描かれる。島固有の黒鳩が黒子役を演じていて印象的だ。これまであまり注目されて来なかった(隠されていた?)八丈島=<島>での戦争が、この物語でクローズアップされ、人々の記憶に残ることがこの小説の大きな目的なのだろう。なかなか感銘を受ける物語で、これは実に巧みな著者の構成によるものかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2010年9月12日
読了日 : 2010年9月12日
本棚登録日 : 2010年9月12日

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