亡き父から生前に渡されていた辞世の一句をタイトルに持ってきたところから、著者の覚悟のほどがうかがえる。自らの父が残した若き日の日記や多くの資料を元に、この伝記とも小説とも取れる作品を書くことで、父の生きた証しを追体験しようとしているかのようだ。多くの資料を精査することで事実をあぶりだす手法は、歴史ミステリとしても通用する内容。著者の父は、明治42年に横浜市保土ヶ谷区の裕福な眼科医の元に生を受け、神奈川中学を経て慶応大学に学び、埼玉県の高校教師として働いていた。折口信夫の門下生として民俗学を学び、在野の研究者としても活躍していたようである。平成4年に83歳で没した後、著者は自宅に残されていた父の若き日の日記を開く。そこに拡がる若き父の世界は、晩年の父の姿とは大きくかけ離れたものだった、、、序章に現れる美しき女性「春来る神」の真の姿はまだ明らかにならないし、まだまだ多くの謎が残されている記述。残された20歳以降の日記を中心に今後も続編が書かれる気配。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2011年3月22日
- 読了日 : 2011年3月22日
- 本棚登録日 : 2011年3月22日
みんなの感想をみる