1989年に亡くなった作家・開高健の私設秘書でもあった著者が長年の沈黙を破って書き記した、きわめてプライヴェートな作家像。著者はパリ在住のワイン・ライターとして活躍中の細川布久子である。
1973年、雑誌「面白半分」のアルバイトとして初めて開高健に接したシーンから、後年パリ在住となった著者が、取材でパリを訪れた開高健と再会を果たすシーンまで、およそ15年に亘る記憶が実に詳細に記されている。
開高健の庇護を離れ、みずからのレゾン・デートルを求めて、著者がパリへ渡ったのが1985年の暮れのこと。それまで手がけていたサントリー関連のワイン記事の仕事がきっかけだった。以来、開高健の死をはさみ、現在までその暮らしが続いている。
細部に至れば至るほど、著者の想いが溢れて思わず戸惑うほどの描写となっている。記憶の中の開高健はあくまで健在、ぶっきらぼうなようでいて、人間味のある存在感にあふれている。いわば、著者の青春メモワールであり、今は亡き師への恋を歌い上げた絶唱のようにも思える。
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- 感想投稿日 : 2011年7月19日
- 読了日 : 2011年7月19日
- 本棚登録日 : 2011年7月19日
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