あの庭の扉をあけたとき

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本棚登録 : 75
レビュー : 14
著者 :
ぱとりさん  未設定  未設定

「わたしは七十になったけど、七十だけってわけじゃないんだね。生まれてから七十までの年を全部持っているんだよ。」-『あの庭の扉をあけたとき』

ああ、この話は、無防備に読んではいけません
何故なら昔をどうしても、思い出してしまうから

庭があって
柿の木があって栗の木があって
柘榴も梅の木もあって
春は松明で八重桜の毛虫をじりじり燃やして
秋は枯葉をぼんぼん燃やして焚き火して
栗を焼いて芋を焼いて
柿の木のてっぺんまで登ったら町中が見えて
遠くに消防署のやぐらも見えて
枝が折れて地面に落ちて息ができなくなって

近所の家にお風呂をもらいに行ったこと
上棟式にお菓子を拾いに行ったこと
夏は雨戸を開けて夜風を入れて寝たこと
風邪をひいてストーブの上の盥の蒸気を喉にあてたこと
子犬を拾って育てたこと
螳螂の卵が孵化したこと

自転車の練習をした砂利道
凧を上げに行った高台
好きな子の家の近くを通るときの自分
誰もいない家に帰って鍵を明ける自分
何故だかみんな、白黒写真になって

忘れたわけではないんだな
忘れるはずがないんだな

レビュー投稿日
2010年3月1日
本棚登録日
2010年3月1日
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