明暗 (新潮文庫)

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本棚登録 : 1355
レビュー : 107
著者 :
あぶくの言葉さん 純文学   読み終わった 

明暗の時期、漱石は「則天去私」という言葉をよく使ってたらしい。
自分が「私」を確立する時、「私」を確立してる他人を認めることを思う。
太宰、ドスト、伊藤計劃とか未完ものは読んで来たけど、比較にならない未完成性。何処に持って行ったら良いのかわからない読後感に弱る。

よく喋る女達も新しかったが、どこにも世の中がないという小林という胡乱な男にソワソワした。彼は、どれだけ社会から弾かれている人間でも、時には至純至精の涙が零れるって話した。小林の涙を読みたかった。則天去私で言えば、彼は「天」が人に嫌がらせを遣れと命ずるからでだけで、自身には目的は無い。でも「天」には目的があるかもしれない、僕はそれに動かされてるだけで、そして、それに動かされるのが本望だなどと、ほざく。カラマーゾフチックで、罪と罰みたい。

表題に因み、散らばる明暗のメタファー、陰と陽。男女は陰陽不和だから引合うが、継続には陰陽和合を努力しないとなんて、常套の恋愛セオリーもあった。
平凡なのに余裕な主人公の津田が、女にほだされ、明から暗へ移行する描写が絶品。漱石のプロットは、後半に向け急変を辿る。ダイナミックに死への疾走、それはまた生を謳歌する。
横滑りで幽霊と化した津田と清子の再会、これからのところで中絶。
読者を宙ぶらりんにした問題作。

レビュー投稿日
2016年7月30日
読了日
2016年7月28日
本棚登録日
2016年7月6日
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