宦官: 側近政治の構造 (中公新書 7)

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  • 中央公論新社 (1963年1月1日発売)
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宦官、この不可解なるもの。去勢し宮廷に奉仕する存在。

この宦官は中国の特産ではなく、エジプト、ギリシア、ローマ、トルコ、朝鮮まで存在しており、世界の文明国で存在しなかったのは日本だけであった。

「清朝の歴史家は、各王朝ともその衰亡の原因が宦官にあったことを指摘する。とくに、漢・唐・明といった大帝国にいたっては、直線、宦官に滅ぼされたと説いている」(本文P3引用)

宦官の存在意義は?諸悪の根源の宦官がなぜ清朝末期まで存在したのか?

読んだ後でも答えははっきり分からなかったが、気になることを書きとめる。

古代では、去勢をした宦官は、普通の人間よりはるかに信頼に値すると考えられた。

実際に去勢すると性格の変化がおこる
・残忍でなくなる
・害意のない宥和的なものごしである
・自ら強いものに尾をふる
・弱さや劣等感を告げて迎合する
・女や子供に愛情をもちペットして小さな犬をかわいがる

本書を読むと宦官の権力嗜好を垣間見るが、だいたいの宦官は上記のような特徴をもっているのだろう

嫉妬心の強い中国では、「男女の嫌疑をさけ、嫉妬心を慰安あうる方便として、中世の宦官を使うようになったのは当然の成りゆきかもしれぬ」(本文P19引用)

また、後宮の純潔を守るため、宦官の存在理由は確かに存在した。

しかし、秦、前漢、後漢、三国、西晋、隋、唐、宗、元、明、清での各王朝で宦官が関わりは大きい。 

そもそも、宦官になる目的は、貧しいものが富を得る手段であったからで、実際に汚職によって財をなした宦官は多数いた。 宦官をけん制する天子は多くいたが、結局は失敗に終わっている。 何か、宦官という存在が大きな生き物となって王朝転覆をはかっていると錯覚するが、結局は個々の利権・賄賂欲しさに行動しただけなのだろう。 まぁ結局よく分からないまま読み終わった感じはするが、去勢したと正確が温和になったところで、人間の物欲までもは取り去ることは不可能なんだと実感。

曹操について
後漢の時代、宦官が順帝を担ぎ出し、宦官が養子を迎えて襲爵することを許可させた。この結果、宦官が漢代の封建的身分制度を破る結果となった。三国時代の主人公の一人である、曹操の祖父曹騰は子時代の宦官で、宦官大臣として帝につかえていた。

科挙の進士と宦官との抗争が少なくて残念。

王朝が変わるときの祖は、宦官制度の縮小を試みて成功したこともあったが、二世、三世になるにしたがって、宦官の勢力が増大し、その結果王朝を混乱させることとなる。

結局、中国を舞台とした近い民族の争いで覇権をとっただけでは変わらなかった宦官制度も、清の末期で専制君主制が終わりを迎えたと同時に宦官制度も終わりを迎えた。

中国の歴史と宦官  宦官というテーマで歴史を見ていくのも悪くない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養(古典文学)
感想投稿日 : 2013年4月19日
読了日 : 2013年4月19日
本棚登録日 : 2013年4月19日

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