天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書 2295)

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  • 中央公論新社 (2014年11月21日発売)
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ご存じ「武士の家計簿」の著者が朝日新聞に連載したエッセイを新書にまとめたもの。2015年の日本エッセイスト・クラブ賞受賞作。

以下内容の面白いエッセンスです。
豊臣政権を揺るがした天正地震(1586年)と伏見地震(1596年)の2度におよぶ大地震が豊臣政権崩壊の引き金になったという。
特に後者の地震後、秀吉が伏見城の再建と、朝鮮再出兵を疲弊に苦しむ諸国の大名に命じたことが、豊臣から徳川へ人心が移り始めるきっかけとなり、政治の潮目が変わった。
伏見地震の直後、秀吉は小屋に蟄居していたので、徳川家康と家臣は防御が手薄な秀吉を急襲する計画を謀議した資料が国立公文書館の中で見つけた時は、著者は鳥肌がたったという。ただ家康は明智光秀の末路を見ていたので、実行はしなかった。

1828年のシーボルト台風の被害から立ち直るために、佐賀藩では西洋文明を重視する改革派が登場し、以後軍事大国となり幕末史にも影響を与えたと言われる。
余談だが、シーボルト台風に先立ち、1808年にイギリスの軍艦が侵入する事件が起き、佐賀藩は長崎湾を守りきれなかった。この後佐賀藩では西洋帆船との戦いを念頭に置くようになった。とてもかなわぬ西洋軍艦と戦うために、この時に考え出されたのが「捨て足軽」という自爆部隊である。
西洋の圧倒的な軍事力への対抗手段として、非西洋は、しばしば「自爆攻撃」という無茶をやってきた。太平洋戦争での日本の特攻隊がそうであり、イスラム過激派の自爆攻撃がそれである。それらの西洋への自爆攻撃を組織的に準備した最古の歴史的事例がここにあるという。

以上のような面白い話が満載であるが、やはり3.11の東日本大震災のような被害を最小限に食い止めたいと願う著者が、歴史の教訓を今日に当てはめようとする熱意がひしひしと伝わってくる良書であり、一読をお勧めします。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2016年2月1日
読了日 : 2016年2月1日
本棚登録日 : 2016年2月1日

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