新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方 (文春新書)

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レビュー : 207
著者 :
piccolo33さん  未設定  読み終わった 

当代きってのインテリジェンス・プロの、池上彰と佐藤優の対談。面白くないわけがないと、本屋で即買い。期待を裏切らない面白さであった。
特に佐藤優のロシアとイスラエルとキリスト教という特殊な切り口を持った凄い分析力に魅力を感じる。全然違うタイプのこの二人の波長が何故合うのかも不思議の一つ。

【中国の民族問題】
・国内に56もの民族を抱えている中国は、今の共産党政府に従い、宗族のネットワークさえあれば近代化は可能なのか? いわば中国はプレモダンの国が、近代的な民族形成を迂回してポストモダンに辿り着けるのか、という巨大な実験をやっている。

【中東】
・5月の安倍内閣のイスラエルとの共同声明を日本の中東政策の大きな転換点と見る。
・イスラム国の特殊なのは、シリアやイラクといった国家を支配することを目標としていない。
・結局「アラブの春」で露呈したのは、不安定で脆弱な中東国家の実体だった。
・アラブの春によって、中東における共和制型の政権を倒すことに関心を持った国があった。それがサウジアラビア。アラブの春による混乱に乗じて、中東に覇権を確保することを狙っていたのではないか。
・金融政策や財政政策といっても、世界の富は国家を迂回して動いている。アメリカは膨大な情報を集めているが、それがテロの防止に役立った事はない。冷戦後20年も経って、政府が情報とマネーを統制できなくなっている。
・世の中には旧来型の戦争観を持っている国がある。ロシアであり、中国であり、イランだ。民主主義国は、極力戦争を回避して外交によって回避しようとする。ところが戦利品を獲れるという発想をもつ国は本気で戦争をやろうとする。短期的には、戦争をやる覚悟を持っている国の方が、実力以上の分配を得る。これが困るところだ。
・イスラエルが全力を挙げて、シリアのアサド政権を支持している。これはイスラエルにとってアサド政権は予測可能な敵だが、政権が倒れてシリアが混乱したら何が起こるか予測不可能になる。

【欧州】
・カイザーのドイツ帝国は、軍事力によってウクライナを穀倉地帯として支配しようとした。その後、ナチス・ドイツは人種神話によって、同じ事をやろうとした。そして現在のドイツはユーロの力によって、それに成功した。
・永世中立国は大失敗だったというのが、二度の大戦からベルギー人が学んだ教訓です。周りの国が約束を守ってくれて初めて、永世中立国はなりたつ。約束を守らないという国が一つでも出てくれば、成立しなくなる。

【北朝鮮】
・北朝鮮は「帰国希望者が2万人いるから受け入れてくれ」などと恐ろしい事を言ってくるかも知れない。

【韓国】
・朝鮮民族が中国のすぐ傍にいながら同化されずにやってこれたのは、決定的な喧嘩をしなかったから。そう考えると中国といかにうまくやるかということが、韓国の生き残りにとっては死活問題になります。朴槿惠はそう気づいているのでしょう。

【アメリカ】
・ミズーリの問題が軟着陸できるかどうかを含めて、アメリカの内政がかなりの混乱に陥るのでは。もはやオバマは外交ではなく、内政問題に縛られてくる。(早くも9月時点で指摘)
・オバマは頭が良く教養も高く、いわば「名誉白人」にすぎない。人種差別に関する悪を教えられていない。
・アメリカでは、実質的な権力を持っているのは、数としては少数派のウォールストリートであり、WASPであるという構造は変わらない。これに2050年問題(白人の少数派転落)があり、民主主義というツールは実行力を失っていく。

【新帝国主義】
・フランシス・フクヤマの「歴史の終わり」のような考え方は間違っており、「新帝国主義」の時代になった。ここでは外交面では古典的な力学モデルの「力の均衡」の世界になる。
・「自由」というのは恐らく「資本の自由」で、それがとんでもない格差を生み出す。
・「平等」とは力が背景にないと実現できない。これが最終的に独裁制に繋がっていく。あるいは皇帝がいて、そのもとでフラットになる。イスラム国は恐らく平等の考え方から出て来ている。
・マルクスは言う「ヘーゲルは歴史は繰り返すと言ったが、そのとき一言付け加えるのを忘れていた。一回目は悲劇として、二回目は喜劇として」

等々と話題がつきない。本当に面白かった。

レビュー投稿日
2014年11月28日
読了日
2014年11月28日
本棚登録日
2014年11月28日
4
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