角のないケシゴムは嘘を消せない (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社 (2011年1月6日発売)
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本棚登録 : 154
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『プールの底に眠る』でメフィスト賞を受賞し小説家デビューした白河三兎氏の「角のないケシゴムは嘘を消せない」を読了。

 物体を消す事が出来る人間と消したものが見える人間が存在するという設定で展開して行く兄妹と兄と離婚したばかりの女性とその息子それに兄と出会う透明人間が絡み合う人間模様、一部恋愛模様を描いた作品。

 兄信彦、妹琴里、元妻加奈子、加奈子の連れ子悟のキャラクター設定がまず秀逸だ。離婚が成立したその日に、信彦が自分の部屋に透明人間の女性が居る事に気付き不思議な同棲が始まるところから物語が展開してく。元妻も妹も結構きっちりと今風でとんがった性格の女性として描かれていてそういった女性との気を使ったやり取りがああーこんなのが今の男女関係だよねとか思わせられたりするのもこの小説を読む楽しみの一つだ。

 人・物が透明に出来る特殊能力を持つ女性とその実体をみる事のできる人の役割の男性とその能力を持った人は政府の管理下にありトレーニング機関まであるといった奇想天外な設定を巧く消化し、ちょっと恋愛物語っぽい男女の絡みをうまく組み込んでのファンタジーっぽいエンターテインメント作品に仕上げた作者の技量はなかなかのものかと。

 そんな面白い設定、ユニークな登場人物と先の読めないプロットが楽しい不思議ミステリーを読むBGMに選んだのはLester Bowieの"Great Pretender"。ECMっぽくなくて好きだなあ。
https://www.youtube.com/watch?v=PeYNXbzGFDA

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年6月10日
本棚登録日 : 2017年6月5日

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