浦からマグノリアの庭へ

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レビュー : 5
著者 :
pikarin777さん  未設定  未設定

小野正嗣氏のエッセイ『浦からマグノリアへ』を読了。小説家ではある著者が書いたエッセイであり、書くという事の源泉に関していくつかの観点から触れたエッセイ集となっている。

 エッセイに寄ると著者が最初の小説を書いたのもオルレアンに居たときだそうで、自分が居た大分の生家近辺の集落の末尾に浦という一文字がついていた故故郷を浦とよび一報フランスオルレアンの庭にあったのがモクレン科のマグノリアの花ということで、著者の人生で二つの大事な時期を切り取った二つの言葉からこの本タイトルが出来ている。

 いくつかのエッセイの中で多くを割いているのが彼の人生の中で作家となるための人生の基盤となった生活経験であるフランス オルレアンにおいての大学教授クロードとその妻エレーヌと一緒に暮らした(暮らしたというより居候をさせてもらっていたというのが正しいが)日々に関する回想だ。クロードとエレーヌは博愛主義の見本のような方達で日本人である著者のみならず困っているアフリカからの移民や地元でも生活苦の老人まで幅広く助けている人素晴らしい夫婦で、彼達の人類愛あふれるエピソードが次々と語られていく。

 その次に多くページが割かれているのは書く事と読む事の関係に関してだ。著者は読む事は書く事にとっての大事なベースになるものだとしている。大江健三郎や中江健次を引っ張りだして彼達の著作に大きく関わっただろう先人が綴った作品に関しての分析を進めている。また自分自身でも普遍的な文学を書こうとした時に彼は世界の文学に触れるべきとして、ラテン・中国・ロシア・アメリカなどなどの様々な文学に触れる事を自分に課している。以前の日本文学といえば欧米文学および日本文学であったが、いまは世界の人たちの作品が手に入るので広くそれらに触れるべしとしている部分には共感を覚えた。翻訳物を毛嫌いしていたがこれからはちょっと色々な国の文学に触れようと思った、

 もう一つ面白かったのが歴史的作品の翻訳に関しての考察で、翻訳という物の難しさ、奥の深さをラブレーを訳した渡辺一夫氏と宮下志朗氏の翻訳を詳細に比較しながら語ってくれていてこのエッセイもかなりインパクトがあり自然と唸らされた。

 これらの教養触れる文学を志す人の綴ったエッセイと呼ぶのは少し軽く聞こえすぎるくらいの深い著者の考察を数々を読むBGMに選んだのがChick Coreaの"Piano inprovisation Vol .1" なまピアノのチックはいいなあ。
https://www.youtube.com/watch?v=WKdYFAhHJOs

レビュー投稿日
2017年5月11日
本棚登録日
2017年5月3日
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