
歌舞伎町案内人とは、著者が歌舞伎町で築き上げた地位そのものである。
歌舞伎町を訪れる中国人旅行者に声をかけ、旅行者が求める店を紹介して、旅行者からチップを、店からマージンをもらうのが、歌舞伎町案内人である。
現在のこの地位を築くまでには、ヤクザやヤクザを後ろ盾とした客引き等との棲み分けに至る闘争などがあり、そういったエピソードをリアルに描いている。
また、14年間にわたって歌舞伎町に立ち続けてきた著者は、当然歌舞伎町では有名な事件を目の当たりし、あるいは当事者となっており、それらの事件の裏側についても語られている。
歌舞伎町を知る人であれば、頭の中で風景を描きながら読める。
歌舞伎町を「危険な繁華街」程度にしか知らない人にとってみれば、どこがどう危険なのか、またどういう面白さがあるのかを知ることができる作品である。
本作品の特徴は、繰り返しになるがリアリティである。
ただの留学生だった著者が歌舞伎町に染まっていく過程での様々な出来事は、実に生々しいものがある。
作品として完成度が高いとは個人的には思えないが、ノンフィクションとしては非常に秀逸である。
歌舞伎町は新宿のわずか一部でしかない。
それでいながら、新宿のイメージを代表する街であることは、歌舞伎町のある種魅力と言えるだろうし、「新宿は危険な街」という一面的なイメージを発信してしまう点もあり、歌舞伎町の功罪と言えよう。
- レビュー投稿日
- 2009年11月10日
- 読了日
- 2009年9月8日
- 本棚登録日
- 2009年9月8日
『歌舞伎町案内人 (角川文庫)』のレビューへのコメント
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