海のふた (中公文庫)

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本棚登録 : 1859
レビュー : 228
もとこさん よしもとばなな   読み終わった 

夫と同名の映画を見てから、そういえばここ10年ほど、よしもとばなな作品を読んでいないなぁ、と思って、ブックオフで中古本を買ってきて読みました。

私は「キッチン」が話題になった頃(当時海外在住の中学生だったのですが)から「ハードボイルド/ハードラック」あたりまでは全作(エッセイ含む)読むくらいのファンだったのですが、「アムリタ」あたりからのスピリチュアルな作風に違和感をおぼえて、その後よしもと作品からは遠ざかっていました。
だから「海のふた」を読み始めたときも、「また失望することになったら嫌だな」と恐れる気持ちもあったのですが、結果としては恐れを覆す、よい読後感に満たされました。

寂れてしまった地方の町。
私は旅行やハイキングが好きなので、房総半島や鬼怒川など、昨年だけでも結構いろいろと歩いて回っているのですが、そのときに抱いた、たとえば「地方都市は疲弊している、壊れた建物を撤去するお金もないんだ」という感想がふっと蘇ってくるような瞬間が、この本を読んでいて何度もありました。

私はこの本を、疲れてしまった人間の再生だけでなく、疲弊した街や地方共同体、自然環境を再生していくための静かな決意表明だと感じました。
かき氷屋さんの経営で自活、という設定には非現実的な印象を持つものの、その根底にある、自分の好きなこと、自信の持てるもの、そしてずっと続けられそうなもの、を仕事にして、生活の糧を稼いでいくことの大変さと大切さを、ばななさんらしい筆致で綴られた、良作だと思いました。

レビュー投稿日
2018年6月11日
読了日
2018年6月10日
本棚登録日
2018年6月11日
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