生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想 (星海社新書)

著者 :
  • 星海社 (2019年12月27日発売)
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感想 : 65
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本書の購入は予定していなかったが、タイトルとデザインが興味を引いてつい買ってしまった。疲れていて、この本を購入したというのは、やや安直な選択だったかと思ったが、読んでよかった、出会えてよかったと思える本だった。
シオランという思想家については寡聞にして知らなかった。フランス語で著述していたというので、これまで名前を聞いたことがないのは意外だった。
シオランの思想の内容を、若手の研究者である著者が、わかりやすく身の回りの出来事や具体例を交えて解説してくれている。「ペシミストの王」にふさわしく、怠惰や自殺、憎悪や厭世観など、暗い話題が盛りだくさん。怠惰や憎悪などは共感できる部分も多いのではと予想していたが、自殺については、私は自殺を思ったことはないので、理解できるのかが不安だった。だが、自殺を積極的に勧めるような内容というよりは、「自殺の観念」を持つことによるメリットなどについてであり、その考え方自体は興味深かった。キーワードで分類されている各章の内容は相互に関連していて、シオラン自身の引用文はアフォリズム的な面があって実際には読みにくいのではないかと思ったが、うまく著者が筋道を立てて解説してくれているように思う。
本書では、シオランは思想家としていわば中途半端に終わってしまっている、としているが、もちろん決して貶めている意味でそうしているのではない。シオラン個人の「失敗」している実人生からも学ぶべきところがある。
しかし、とりわけ私が本書を読んでよかったと思うのは、著者がシオランの思想を紹介するのみならず、自身がいわば、いかに個人として「シオラン的」であるかを書いている点である。著者は、大学時代の友人と言える存在は2人だけだった、と書いている。また、人生のむなしさの章でも、シオランその人よりもむしろ著者自身の強い厭世観も垣間見える。
個人的な感覚として、自分の著作にこのように書く人は、本当に孤独であり、一方で孤独を望んでいなくもあり、またおそらく何事にも誠実な方なのだと思う。つまり、自分に似ているということだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年6月20日
読了日 : 2020年6月14日
本棚登録日 : 2020年6月14日

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