文學界 (2020年6月号)

  • 文藝春秋 (2020年5月7日発売)
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感想 : 4
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「赤い砂を蹴る」

ある女性が、ブラジルの日系農場へと向かうところから始まる。芽衣子さんという友人がおり、その友人の生まれ故郷に一緒に向かっているのである。芽衣子さんは母の友人であったというから、60代くらいで、主人公の女性とは数十年の年齢差があるはずだが、あまりそれを感じさせないほど親しいようだ。
主人公と芽衣子さんにはそれぞれの過去がある。主人公の母は二度離婚していて、それぞれの元夫との子どもと暮らしていた画家であった。下に異父弟がいたが、小学生ごろに心臓発作でなくなってしまう。そして、シングルマザーだった母も直近に癌で亡くしている。芽衣子さんは、ブラジルの封建的な農場社会から飛び出して東京で暮らしていたが、夫は晩年アル中になるし、義母は苛烈な性格だったようだ。それでもこの芽衣子さんはいずれも献身的に、かつ淡々と支え、看取っているが、その原動力は何なのか。
母を、家族を理解するということ、それが遅すぎたこと。実の娘に遠慮する主人公の母と、芽衣子さんの義母。
複数の家族の様子が、時代と国境を越えて多層的に登場するので、構成は面白いと感じた。
ただ、ブラジルである必要はどんなところにあったのかは、読み込みが不足していたのか、良くわからなかった。また、過去にこれだけ色々あった人たちが、過去にとらわれないというのは無理な話である。たくさんの家族やその歴史などの要素があり、重層的であった一方で、もう少し主人公の家族にフォーカスしても良いのかなと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年7月12日
読了日 : 2020年7月12日
本棚登録日 : 2020年7月12日

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