幾千の夜、昨日の月

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年12月27日発売)
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本棚登録 : 461
感想 : 86
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特に角田作品のファンではないんですが、数年前に雑誌連載を楽しみに読み続けていて、単行本化が待ち遠しかった本。

角田さんの他のエッセイでも、夜に関するものが多いように感じていたんですが…角田さんの夜の彷徨をまとめたエッセイ。ご自身を「大変なビビり性」「国境というものに慣れていない」とおっしゃりながらも、ひとりバックパッカー旅とは、結構大胆な行動をなさってるような(笑)。

一人バックパッカー旅の夜に驚くようなことや、残念なことに遭ったときのリアクションには、「角田さん、そんなあ」と笑いながら読めます。そこは椎名誠さんの旅エッセイと同じネタだとは思うんだけど、角田さんの旅は、「どうなっておるのか!」という怒りに転ずることもなく、そのびっくりも戸惑いも、一枚紗がかかったような感じで、理性的で克明にとらえられている。しかもどこか寂しく甘美。物理的にひとりでお過ごしになるのがお好きなのかもしれないけれど、自分と他人をきっぱり分けている孤独感がどのエッセイにもさしはさまれているからかな、と思います。旅先での『男を守る』は、なんだか大当たり感がありながらも、まさしく一夜の夢だし、『夜と恋』の、夜中にタクシーに飛び乗って走り出す感覚は、「今じゃなくても、明日があるでしょう」というまっとうな意見なんか吹っ飛んでしまうほど、切羽詰まって美しい。でもこれも、相手に近づけなかった、しかも過ぎ去って戻ってこない瞬間の寂しさが勝っているように思います。外れてるかもしれないけど、ポルトガル語の「サウダージ」ってこんな語感かな?と思ったり。

昔から真性のビビりで人見知りもひどくておまけに夜が弱く、試験前に徹夜しては身体を壊し、飲みに飲んで午前様になることもほとんどなく、眠くなってきたらたちどころに機嫌の悪くなる私としては、夜でなければ知ることができない重さや静けさ、高揚感をほとんど知らずに今まできてしまったのではないか?と、ページをぱらぱらめくりながら思いました。残念な人生だ、私(涙)。

穏やかな大人の語り口のわりに、装丁がちょっと乙女チックかなとも思いますが、すごく雰囲気がよくて行きとどいたブックデザインなので、本屋さんで勇気を出して、カバーをえいやっとめくってみられるのもおすすめかと。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ひっそりと静かな本
感想投稿日 : 2012年2月15日
読了日 : 2012年2月15日
本棚登録日 : 2011年12月27日

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