こちらも、課題本の周辺本ということで読んでみた。原題は直球で、“PEMBERLEY: A Sequel to PRIDE AND PREJUDICE”。
「続」と銘打ったスピンオフ本だが、本編からの続けかたも、スピンオフ本としては直球だと思う。ざっくりいえば、「大人が考える、シンデレラが王子様と結婚したその後」的なお話。中流家庭出身のエリザベスが、大富豪のダーシー氏と結婚して1年後。2人の仲はいいものの、蜜月は続いているような続いていないようなで、屋敷や地所の差配も大変だし、夫の親戚や自分の実家も小うるさいったらありゃしない。ああ、リアリティ・バイツの厳しさよ。この時代にネットがあれば、エリザベスは間違いなく、「夫の親戚がいちいち口を差し挟みます」とか、「実の母親ですが我慢ができません」などと、ネットの相談コーナーにこまごまと書きこんでいたのではないか?と思ってしまう。
こういう「続編」の難しいところは、だいたいの場合、本編を読んでいないと面白さを感じる度合いがものすごく浅くなるところだと思う。この作品も、自分が『高慢と偏見』を読んでいるから、「ああ、エリザベスも大きなお屋敷のマダムとして大変だし、ダーシーさんも地所の人事やら何やら、いろいろ忙しいよね」と、登場人物の事情をくんでついて行くことはできるんだけど、この本からいきなり読み始めると、富豪に娘を嫁がせたベネット夫人の浮かれ加減や、どこの馬の骨ともしれない娘を疎ましく思うダーシー氏のおばの高慢さ、なにげに姉の屋敷の出入り禁止をくらっているエリザベスの妹夫妻の疎ましさが理解しにくい。初めて読む人のために、いろいろ皮肉をきかせてデフォルメした結果だと思うけど、「なんだ、この俗悪な人たち!」とげんなりしてしまうところも多いんじゃないだろうか。それに、こういうスピンオフというか、同人誌的にいう「二次創作」的な作品は、読んでいる側よりも、書いている側の人のほうが断然楽しいんだろうと思う。そもそも間口の広い小説ではないけれど、そのあたりで、手に取る人の範囲もぐんと狭まってしまっているような気がする。
オースティンの筆致を踏襲して、巧みに書いているとは思うものの、手放しで楽しむことは難しい小説かもしれない。で、この☆の数です。ちょっとごめんなさい。
- 感想投稿日 : 2014年3月27日
- 読了日 : 2014年3月27日
- 本棚登録日 : 2014年3月7日
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