ポータブル文学小史

  • 平凡社 (2011年2月15日発売)
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本棚登録 : 93
感想 : 9
4

不思議なタイトルで手に取りました。黄みがかったピンクの装丁がきれいで、厚みもなくてすっきりした本。

ポータブルを愛する秘密結社、シャンディのお話…とはいうものの、「ポータブルって?しかもシャンディって?」と、わからん設定だらけ!ニーチェにヴァレーズ、デュシャン…もう、登場人物に詳しくないし!と、ぽかんとしながら読み進めました。

それでも、慣れてくると、20世紀前半を生きた作家・アーティストがポータブルというつながりを持ちながら、ヨーロッパのあちこちを飛び回る様子がじんわりと面白くなってきます。同時代に脚光を浴びた著名人のオールスターキャストで物語が動く様子は、「ウルトラ兄弟総出演」「歴代仮面ライダー総出演」の映画のようでもあり、ファンタジックなところはクラフト・エヴィング商會の作品のようでもあるし。浅学なので、書かれたエピソードのどこまでが史実かフィクションかわからないのが悲しいところですが、「どれも当たらずとも遠からずだろう」と割り切って楽しみました。個人的には、「オドラデクの迷路」と「バンホフ・ズー」の章が好きかな。

もうただ、著者の博覧強記(というか文学オタク)っぷりが発揮されていて、じんわり濃ゆいお味の一冊。訳者の木村栄一さんが解説で正直に「この作品はあまり一般的といえず、…」とカミングアウトしてらっしゃるとおり、変化球的な作品ではあるんですが、文学のお遊びがしっかり味わえる本だと思います。で、この☆の数。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2011年3月11日
読了日 : 2011年4月13日
本棚登録日 : 2011年3月11日

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