神作家・紫式部のありえない日々: 1【電子限定描き下ろしペーパー付き】 (ZERO-SUMコミックス)

著者 :
  • 一迅社 (2022年4月25日発売)
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感想 : 7
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清少納言がコミカライズされているなら、紫式部もコミカライズされているだろうと探したら、あっさり見つかってしまった。

夫を亡くし、幼い娘を育てる女性、藤原香子(式部の本名とされる)の心の支えは草紙の執筆、今風にいえば「小説の同人活動」。しかも筆力は確かで、執筆した物語は娘(後の小式部)やその周りにも好評を博している。当時の女性の書きものは男性向けの書物である四書五経や『文選』『白氏文集』と違い、出回るルートは全くないので、源氏物語をあくまでも自分の楽しみのために書く、今でいう「同人作家(≒アマチュア作家)の書いた小説」という位置づけで語るのはちょうどいいだろう。宮仕えには消極的だったが、一条帝中宮・藤原彰子のサロン勤めに誘われ、「同人誌に必要な紙が手に入る」というイージーかつ切実な理由で、『源氏物語』をたずさえて女房「藤式部」として出仕するさまが描かれる日常系マンガである。著者さんと出版社さんの目のつけどころがよすぎる。

ほどなく『源氏物語』の執筆活動は主の彰子を含めた周囲に漏れてしまう。『源氏』に推しカプを見出す(しかも強火)同僚、日常の激務を配慮してくれる上司と、意外と反発は招かないものの、趣味が周囲の期待を背負ったto doになってしまうさまは真に迫っていて面白い。それにしても、紫式部は自分で装丁と製本もするのか……限定1部なら可能かな。私は本格的な同人活動をした経験がないので、現代日本の同人作家目線で進む宮中の日常はなかなか面白かった。

一条帝の後宮は藤原北家の思惑が盛り盛りで、時間差で擁立された定子・彰子の両中宮もその周りも大変だっただろうというのは想像に難くない。式部は年齢的にも清少納言の『枕草子』の存在をすでに知っており、しかも読んでいるので、その空気が分かっているし、彰子にもそのふしがある。意外なことに、『枕草子』の話題が切り出されるまでの「触ってはいけない定子時代」にあった定子サロンのウキウキ、キラキラ感や、一条帝の未練(のようなもの)が残った後宮を上手く取りまわせるかどうか分からない、彰子の戸惑いがとても繊細でよく出ていたように思う。おふざけが多いようで実はオタクの悪ノリを寸止めした、結構真面目な面白いマンガ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画もまた愉し
感想投稿日 : 2023年9月29日
読了日 : 2023年9月29日
本棚登録日 : 2023年9月27日

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