訳者は大久保ゆう氏(2003年初訳)。原著の著作権が失効しているので、青空文庫でこの邦訳をアップできているとのこと。「ロボット」の語が初めて使われたことで名高い作品とは知っていたけど、読む機会がなかったので、ダウンロードして読んでみた。
ある孤島に置かれた、「ロッサム世界ロボット製作所」が舞台。もともとは、ロッサムという名の人物が道楽というか、実験を行っていた場所だが、現在は経営・技術陣が組織化され、研究・開発・販売に精を出している。しかも大繁盛。「ロボット」というからにはメカメカしたイメージを持っていたが、有機的なプロダクトだったことが意外だった。人間ではないから、「労働代行製品」といえるのかも。
大久保氏の解説でほとんどのことが網羅されているので、付け加えてどうこういうことはまったくないんだけど、1920年という発表時期を考えると、労働問題やその解決方法の模索、人間と似た、あるいは同等、それ以上のプロダクトを生むことで起こるだろう科学・倫理上の問題、それに対する人(じゃないけど、まあそれ相当のもの)権的配慮など…がみっちりと詰めあわされており、ここまで先回りされて考えられていることにただただ驚いた。「これ、問題になるよなあ」とうすぼんやり思うことが、いちいち大きな問題となり、尋常でない混乱を招いていく。そこから目を離さない、『ダーシェンカ』や『園芸家12か月』のチャペックおじさんは、実は硬派なお人だ。今となっては、展開や小道具がありきたりの感は否めないけど、それはこの作品自体の問題じゃなくて、これを下敷きにした作品が数えきれないほどあるということなんだろう。
島に意気揚々と乗り込んでくる女性・ヘレナが、自覚なしに、あるいは自覚して少しずつやらかしてしまうさまが肝。ただ、いただけないほど思慮の浅いキャラクターに見えたところがイラッとした(笑)。舞台が研究所のゲストルームや研究室、あるいは所長の私邸なので、動きとしては少ないし、後半の大騒乱の演出は難しいかもしれないので、舞台にかけるより、大人テイストのしっかりしたアニメで見たいと思った。ティム・バートンが人形アニメで作ってくれないだろうか。
- 感想投稿日 : 2013年2月13日
- 読了日 : 2013年2月13日
- 本棚登録日 : 2013年2月13日
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