RUR ――ロッサム世界ロボット製作所

  • 青空文庫 (2006年5月18日発売)
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感想 : 5
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訳者は大久保ゆう氏(2003年初訳)。原著の著作権が失効しているので、青空文庫でこの邦訳をアップできているとのこと。「ロボット」の語が初めて使われたことで名高い作品とは知っていたけど、読む機会がなかったので、ダウンロードして読んでみた。

ある孤島に置かれた、「ロッサム世界ロボット製作所」が舞台。もともとは、ロッサムという名の人物が道楽というか、実験を行っていた場所だが、現在は経営・技術陣が組織化され、研究・開発・販売に精を出している。しかも大繁盛。「ロボット」というからにはメカメカしたイメージを持っていたが、有機的なプロダクトだったことが意外だった。人間ではないから、「労働代行製品」といえるのかも。

大久保氏の解説でほとんどのことが網羅されているので、付け加えてどうこういうことはまったくないんだけど、1920年という発表時期を考えると、労働問題やその解決方法の模索、人間と似た、あるいは同等、それ以上のプロダクトを生むことで起こるだろう科学・倫理上の問題、それに対する人(じゃないけど、まあそれ相当のもの)権的配慮など…がみっちりと詰めあわされており、ここまで先回りされて考えられていることにただただ驚いた。「これ、問題になるよなあ」とうすぼんやり思うことが、いちいち大きな問題となり、尋常でない混乱を招いていく。そこから目を離さない、『ダーシェンカ』や『園芸家12か月』のチャペックおじさんは、実は硬派なお人だ。今となっては、展開や小道具がありきたりの感は否めないけど、それはこの作品自体の問題じゃなくて、これを下敷きにした作品が数えきれないほどあるということなんだろう。

島に意気揚々と乗り込んでくる女性・ヘレナが、自覚なしに、あるいは自覚して少しずつやらかしてしまうさまが肝。ただ、いただけないほど思慮の浅いキャラクターに見えたところがイラッとした(笑)。舞台が研究所のゲストルームや研究室、あるいは所長の私邸なので、動きとしては少ないし、後半の大騒乱の演出は難しいかもしれないので、舞台にかけるより、大人テイストのしっかりしたアニメで見たいと思った。ティム・バートンが人形アニメで作ってくれないだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 戯曲もいかがですか
感想投稿日 : 2013年2月13日
読了日 : 2013年2月13日
本棚登録日 : 2013年2月13日

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コメント 4件

猫丸(nyancomaru)さんのコメント
2013/02/15

「ティム・バートンが人形アニメで」
今でしたらCGで作っちゃうんでしょうね、、、映像化するとしたら、私は、もっと抑えた感じのクエイ兄弟にお願いしたい。。。

Pipo@ひねもす縁側さんのコメント
2013/02/15

フルCGだと制作側にはある意味楽なのかもしれませんが、リアルさを出そうと思えば思うほど、作りものくささ全開(特に陸上生物)になるのが皮肉だなあ、といつも思います。

この作品のトーンからいえば、クエイ兄弟のほうが合ってるかもしれませんね。なるほどなるほど。

lacuoさんのコメント
2013/05/01

これが、ロボットという言葉がはじめて使われた作品なんですね。

Pipo@ひねもす縁側さんのコメント
2013/05/01

lacuoさん:

実際には「ロボタ」に近い発音らしいんですけどね。読んでみると、実際に今、私たちのイメージに近い「ロボット」を作ったのは、アイザック・アシモフのほうのように感じます。

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