宗教というよりも、倫理道徳や古い封建的思想といったイメージを持たれがちな儒教。その本質を根本から問い直し、儒教の宗教性について考察する書籍。
日本の仏式葬儀で、多くの参列者は柩を拝む。だが、それは誤りだ。仏教徒は本尊を拝むべきで、柩を拝むのは仏教ではなく儒教のマナーである。この葬儀儀礼を抜きに儒教は存在しえない。すなわち、儒教は死と深く結びついた宗教である。
古来、中国人は、現世は快楽に満ちた楽しいところであり、少しでも長く生きたいと願った。そんな彼らにとって、死は大変な恐怖だった。
死に怯える中国人に、死は恐怖ではないと説明することに成功した集団が〈儒〉である。儒は、死者の魂を呼び戻す招魂儀礼を行うことで、死者を現世に再生できると考えた。そしてこの再生理論を説くことで、中国人の死の恐怖を解決した。
上記のような招魂儀礼は、祖先崇拝、祖霊信仰を根核とし、当然、祖先を祭祀する。祭祀を続けるには、主催者となる子孫を生み続けることが欠かせない。そこで儒は、次の3つの行為を1つに統合し、〈孝〉という独自の理論を作った。
①祖先の祭祀
②父母への敬愛
③子孫を生むこと
孝を行うことによって、自己の生命は祖先の生命であり、また逆に子孫の生命でもあるという、1つの転換が起る。すなわち孝の本質は、永遠の生命を認めようとする生命論である。
宗教とは、「死ならびに死後の説明者である」と定義できる。
中国の場合、漢民族の考え方や特性に最も適した、死ならびに死後の説明に成功したのが儒教であった。そのため、儒教は支持され、国民宗教としての地位を得た。
- 感想投稿日 : 2021年10月1日
- 読了日 : 2021年10月1日
- 本棚登録日 : 2021年10月1日
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