第1部は初心者がベイズの定理の意味や効用について知るには非常に良いと思います(第2部は数学的なところを端折りすぎている気がします)。
しかし,ちょっと納得しがたかったのは,9-6の著者の自論(?)が展開されているところです。モンティホール問題における条件付き確率を設定する際,どうして「ゲーム参加者がAを選んでそこに車があったら、司会者はBをはずれのカーテンとして開けることを決める」というモデルを考える必要があるのか?
モンティホール問題と同型の3囚人問題で,看守は「Aが釈放で,Aが聞いてきたらBが死刑と言おうと決めておいた」という設定であれば筆者の案と同型になる。でも,Aが「教えてくれ」と言ってくることなど看守には想定外じゃないかな。
理由不十分の原則を条件付き確率に拡張するのはベイズ推定からはみ出した推論だと述べているが(p.114),「理由不十分の原則を条件付き確率にも適用するのはモデルの立て方の1つにすぎない」というのがより妥当な論じ方ではないかと思う。「これが正しい!」と主張するのが間違いで,「司会者の戦略がわからないからという理由で理由不十分の原則をモデルに使った」は妥当な推論として認められるだろう。
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統計学-office
- 感想投稿日 : 2016年4月21日
- 本棚登録日 : 2015年12月24日
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