お酒が飲めずタバコも吸わないということあって、美味しいものを食べるのが好きだ。特に5年ほど前にタバコをやめてからは、味覚が以前よりも良くなったようで、たとえば美味しい水とそうではない水の差が良くわかったり、野菜や魚などの鮮度が分かるようになってきた。
だからといって高級料理を食べ歩くグルメになったわけではなく、美味しいと評判のラーメン店があれば足を運んでみたり、唐揚げが美味しいと評判の定食店があれば立ち寄ってみたりと、身の丈に合った楽しみ方をしている。コミックやテレビ番組で人気の「孤独のグルメ」という物語があるが、主人公の井之頭五郎ほどではないものの出張の際にはその街で美味しいと評判の定食屋さんに足を運んだりしている。
今はコロナ禍で出張や帰省ができなくなって残念だが、世の中が落ち着いたらまたそういったことを楽しんでみたいなと思っている。
食を題材にした物語が、原宏一さんの書かれた「星をつける女 疑惑のウニ (角川文庫)」という一冊。絶対味覚を持つ牧村紗英が立ち上げたグルメリサーチ社が、投資家の依頼により人気のお店を覆面調査して星をつけるという物語だ。単にグルメな食事を紹介するということではなく、人気店の裏で行われている数々の悪事を暴いていくというミステリー仕立ての連作短編集とになっている。
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牧村紗英が今回調査するのは、カリスマ料理研究家である須賀ユウコが手がけるカジュアルフレンチ「ユウコの厨房」や幻の日本酒の蔵元「酒蔵烏鵲(うじゃく)」、高級鮨を銀座で手軽な価格で味わえると人気の「すし海将」。それぞれのお店は確かに美味しくて評判が良いのだが、紗英が覆面調査を行っていくうちにそれぞれのお店で微妙な違和感を感じる。調べていくうちに、それぞれのお店でそれぞれの疑惑が湧いてくる。
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グルメ小説というよりは、爽快なミステリー小説。食べることが好きな人もそうでもない人も、同じように楽しめる一冊だと思う。
※本書は「星をつける女 (角川文庫)」の第2弾とされているが、本書は2018年に出版された「穢れ舌」 を加筆・修正・改題した文庫本なので、すでに読まれた方は「あれ?」ということになってしまうので注意が必要だ。
- 感想投稿日 : 2021年5月4日
- 読了日 : 2021年4月16日
- 本棚登録日 : 2021年4月15日
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