科学者は、なぜ軍事研究に手を染めてはいけないか

  • みすず書房 (2019年5月25日発売)
3.45
  • (1)
  • (5)
  • (4)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 120
感想 : 19
3

著名な天文学者による科学者・技術者向け反戦論。突き詰めるとそれはそうなんだけど,やはり一面的な見方だよなあ,という感想。

それと感じたのは,この本は全く当事者への取材というのをしていないためにこういうことになったのかなってこと。
机上で長年の持論を更に煮詰めて世に出しただけ,という感じが否めないのは,やはり弱点なんだろう。

このくだりなど,たとえ実績ある立派な科学者でも,持論に有利なように事実をねじ曲げてしまう良い例かも。
「劣位になった兵器は一度も使われないまま廃棄される…自衛隊が爆撃機を何年かおきに更新しているのが典型」p.79
何の話だろう?自衛隊が爆撃機を運用したことなんて皆無なのに「更新」とは謎すぎる。

日本の支援戦闘機が(F-86F→)F-1→F-2と更新されたことだとしても「何年かおき」には到底ならない(就役F-86F:56年,F-1:78年,F-2:01年)。こういう杜撰な記述が散見されるようでは説得力も薄い。
聡明な人間でも確証バイアスから逃れるのは難しいのだな。

ドローンの「人道性」について,“自国の陣営の被害の可能性をなくし、もっぱら敵のみに被害を与える”p.66と批判しつつ,“敵をせん滅する能力が上回るのなら、そこに多少危険性が残っていてもかまわない。武器の扱いで死傷者が出るのは当然としている”p.231というのは矛盾のような気もしたけど,そうでもないか。
在沖米軍の事故や4月のF-35A墜落なんかが後者なんだろう。もちろん当局は死傷者出るのを当然と考えてはいないけど,そのように見えるというわけか。池内先生はそもそも防衛目的の武装をも認めない立場なんだから,見解の相違は避けられるわけがない。

「自衛隊は国土防衛隊に改組して丸腰になり、あらゆる国際紛争や国家間の対立は交渉と話し合いによって解決すべきだと考えている」p.213
丸腰の「防衛隊」って何だろう?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 軍事・戦争
感想投稿日 : 2019年10月16日
読了日 : 2019年9月27日
本棚登録日 : 2019年9月27日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする