ユートピアの崩壊 ナウル共和国―世界一裕福な島国が最貧国に転落するまで

3.91
  • (7)
  • (16)
  • (10)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 122
レビュー : 24
制作 : 林 昌宏 
polyhedronさん 資源・エネルギー   読み終わった 

 白井市より小さい(人口は1/6),世界最小の共和国。20世紀,燐鉱石(グアノ)に依存してきた経済は,資源枯渇であえなく破綻した。グローバル化が一国の経済と文化を破壊した,その顚末。一級品の題材を読みやすくまとめている良い本。
 独立後,70年代を中心とする黄金時代。燐鉱石のもたらす収入で,夢の社会福祉制度ベーシックインカムが成り立っていた。分不相応な不労所得は,国民を怠惰にし,無茶な浪費と糖尿病を蔓延させた。鉱山や飲食店で働くのは,中国人。島に一本しかない道路を,ナウル人の高級車が駆け抜ける。
 金持ち国家には,「お友達」が近づいてくる。資源枯渇を見据えて海外に投資もした。しかし凋落にはなすすべもなかった。90年代には国家の収入は激減し,銀行は破綻。国民の貯金は失われた。
 経済が破綻したナウルは,不正行為に手を染める。パスポートを事実上無審査で発行し,タックスヘイブンへの転身で資金洗浄に手を貸した。国際的な批判が高まると,難民受け入れで収入を確保。捕鯨,国家承認など,国連での発言権を利用して,大国から援助を引き出すことも忘れない。…しかし,この転落ぶりには戦慄した。最近では再採掘という少し明るい話題も出ているようなのが救いではあるけれど。
 「終わりは来る」と思っていても,人間ってこうなのか,と思う。ナウルは消滅こそしていないが,ダイヤモンド『文明崩壊』にはそういう事例が多くあった。そういう人間の弱さ・愚かさを,人類全体にあてはめて考えると,やはり絶滅という未来しかないのだろうな。それが近い未来にならないように,歴史に学ばなくては。

レビュー投稿日
2013年7月3日
読了日
2013年7月3日
本棚登録日
2013年6月20日
0
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『ユートピアの崩壊 ナウル共和国―世界一...』のレビューをもっとみる

『ユートピアの崩壊 ナウル共和国―世界一裕福な島国が最貧国に転落するまで』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。
ツイートする