ビンラディン抹殺指令 (新書y)

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  • 洋泉社 (2011年6月21日発売)
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 アルカイダって「来る者拒まず去る者追わず」という緩い組織だったらしい。友人・知人といった人間関係を基にしたファジーなネットワークだって。オサマ・ビンラディン亡きあとどうなるんだろ。
 本書第一章は5月2日のビンラディン襲撃作戦の詳細を記述。38分間で未明の作戦は終わった。パキスタンの邸宅内にはビンラディンとその家族など22人がいて,計5人が死亡。銃で反撃してきたのはたった1人だったという。あっけない感じだがそんなものか。
 ビンラディンは90年代からCIAが追跡していた。CIAは98年には彼の専属料理人を情報源としていて,彼の衛星電話も盗聴できていたらしい。巡航ミサイルで攻撃する間際に,ワシントンポストがスクープしたおかげでフイになってしまったという。
 911で,ビンラディンはホワイトハウスへの攻撃に執着していたらしい。でも彼の意志が絶対というわけではなく,実行犯ムハマド・アタや計画したハリド・ジェイク・ムハマドが異を唱えてあの攻撃となったようだ。物静かで慈悲深く,人の話をよく聞くのでビンラディンは慕われてたらしい。
 アメリカ情報当局は様々な兆候を手にしていたが,911を防げなかった。情報共有が不十分だったこと,油断があったことが原因。冷戦終了で人員削減されていたのもある。911以降,テロとの戦いが始まると,大幅に増強されることになる。
 アルカイダという国際テロ組織は,911で世界中にその名をとどろかせたが,その後直接の大規模なテロ活動はできていない。むしろ世界各地のイスラム過激派が,アルカイダの影響を受けてテロを頻発させる。バリ島ディスコ自爆テロ,ロンドン地下鉄爆破,サウジアラビア高級住宅街襲撃など。
 グアンタナモなんて話題になったけど,CIAがテロリスト容疑者から情報をとるやり方がえげつない。合法的に拷問が可能な国に容疑者を預けて,尋問を代行してもらうのだそうだ。CIAのダミー会社の偽装民間機で秘密裏に容疑者を運ぶ。これを「特殊移送」と言っていたとか。
 最後に,著者は狂信的なイスラムテロは低迷期に入ったと観察。極左テロや民族主義テロも歴史的には十年ほどで終息しているし,一般にテロによって人々の境遇が好転することもないと見る。一時的に盛り上がった熱気も,悲惨な流血が続くことで冷めていくとするが,どうだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国際関係
感想投稿日 : 2011年12月20日
読了日 : 2011年8月26日
本棚登録日 : 2011年12月20日

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