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イスラム移民 (扶桑社BOOKS新書)
- 飯山陽
- 扶桑社 / 2024年11月1日発売
- 本 / 電子書籍
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中立を装ってるが、あまりに反イスラム的だなあ、という感想。
例えば、個別の事件をあげて、移民が逮捕されず釈放された!これは移民だから?だとしたら大問題!ということが何度もでてくるが、これは移民だから?と読者に聞かず、著者が自分で調べ、日本人の犯罪の場合と比べて分析するべきでは?
○○だったら大問題、といいつつ、自分で調べず、誘導するような書き方はいかがなものか。
個人的にも、明らかに民主主義、法治国家の現代社会とイスラム教って相容れないよなあ、(原理主義でない、過激でない、一般の)イスラム教徒って、地獄に落ちる(とイスラム教的には言われている)我々のこと、どう思ってるんだろ、と思ったりするけれど。
法治国家と相容れないイスラム教のことを全く知らない、イスラム教初心者なら一読する価値はあるかもしれないけれど……そういう人読んだら、(著者の指向が強すぎて)アンチイスラム教になりそうで怖いなあ、とも思うので、やっぱり、誰にも勧められない本かな。
2025年3月3日
「限界集落」という言葉がある。それが、たった数十年後、日本の国家全体に当てはまる、いわば「限界国家」ではないか。それをテーマにした小説。
小説という体裁だが、少子高齢化で先細りしていく日本の未来を丁寧に書いたもので、小説としてどんでん返しがあったりという面白さではない。しかし、興味ある人には面白い。
移民を受け入れない限り、絶対に、10年後に10代、20代のの日本人は増えない。(だって、現在生まれた人の数はもう決まってるからね)
つまり、日本内部での消費者を対象にしている今の日本のビジネスはどんどん先細りしていく。これは予測でなく、決定事項。
それを踏まえてどう生きるのか。日本はどうなっていくのか。
個人的には、健康寿命が過ぎた後の、介護・医療は諦めてもらうしかないんじゃないかなあ、と思っている。
日本の社会構造や政治のやばさを、陰謀論などではなく、本当に実際に公開されている数値から考察している小説です。
2025年3月3日
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放課後ミステリクラブ 5 龍のすむ池事件
- 知念実希人
- Audible Studios / 2025年2月7日発売
- 本 / その他
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相変わらず、謎の見せ方が上手い。人が死ぬというような悲惨な謎ではないのに、人を引きつける謎。わかりやすい解決編。伏線の張り方。どれも面白い。
ただし、今回だけは、「これが犯人かな?……いや、この場合、お菓子だけ盗まれることはなくて、書類が床に落ちたりとか、足跡とか、絶対に、何らかの痕跡が残るから、違うな」と真っ先に思ったことが真相で。そして、最初に考えた痕跡の話には一切触れなかったのがもやっとしたので、その点で☆ひとつ減。
2025年2月23日
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なぜ難民を受け入れるのか 人道と国益の交差点 (岩波新書)
- 橋本直子
- 岩波書店 / 2024年6月20日発売
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難民の定義をこの本を読んで初めて知った。私は戦争から逃げてきた人は当然、難民だと思っていた。「自国で迫害を受けた」or「自国から迫害を受ける恐れがある」という定義からすると、ウクライナのように、他国から侵略されて他国から迫害を受けて逃げた、というのは当てはまらない。知らなかった。勉強になった。
難民はエリートが多いというのも、考えたこともなかった。言われてみれば、確かに、自国から逃げる手法を考え、実行できること、自国から迫害を受ける恐れがあるほどに影響力がある人、などと考えると、確かになあ、と。
難民が一度自国に来てしまうと条約により追い返すことができないから、まずは自国にいれないように各国が工夫している。迫害されている自国からパスポートやビザを取得することは困難、など、言われて考えてみれば、確かに、と思うが知らなかったことが盛りだくさんで、いかに自分が難民について考えたことがなかったか知った。
カナダ人に「何故難民を受け入れるのか?」という質問に対して「人間は、人に与えることができてこそ、幸せがある」と言った内容の回答が印象に残った。
確かに、自分自身が豊かになって、自由で、迫害されず、富を得て、それで幸せなのか、と考えると、きっとそうではないのだろうなあ、などと考える。
こういう差別や迫害などの問題を考えるとき、今の自分の立場……日本人だとか、年齢だとか、性別だとか、はいったんリセットして、どこの国の誰に生まれるかわからない状態だったとして。と考えるようにしている(どこかの本で読んでなるほどなあ、と思ってこう考えるようになった)。そうやって考えたとき、私は、難民をもっと豊かで平和な国が受け入れる体制の方がいいなあ、と思う。
2025年2月23日
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地面師たち (集英社文庫)
- 新庄耕
- 集英社 / 2022年1月20日発売
- 本 / 電子書籍
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土地の所有者と偽って不動産会社をだまし金銭を詐取する主人公達の物語。
途中で不動産会社に気づかれたり、逆にだまされたりという展開になるのかな?と思ったが、そういうこともなく、ただ淡々と、騙されていく不動産会社とのやりとりがかかれていて、正直面白みに欠けているように思う。オチは好み。
2025年2月23日
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傲慢と善良 (朝日文庫)
- 辻村深月
- 朝日新聞出版 / 2022年9月7日発売
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普段あらすじを読んでから読むか否かを決めるのだが、今回はあらすじを知らないまま読み進めた。すると自分には全く興味のない「婚活」や「恋愛」「結婚」に関する心理模様。
最初は「突然行方不明になった婚約者」というミステリ的状況から興味深く読んでいたが、どんどんと婚活の心理模様の話になり「ミステリじゃないな」これ、と気づき、選書を誤ったか、という気持ちになった。
しかしさらに読み進めると「全然違う性格の心理描写を深く書くの、すごくない!?」となってくる。行方不明の婚約者を探す話のため、婚約者の周囲の人達から主人公が話を聞いていく形式なのだが。まず婚約者の姉。妹を束縛する母とそれに従順に従う妹にもやもやしている。自主性が感じられない妹に読んでるこっちも、なんだ、こいつ、と思う。何考えてるんだ婚約者……と思いっていると、婚約者視点にはいる。婚約者の本当に従順に疑いなく従う純粋な傲慢にイラッとしつつも、その価値観の描写がまた丁寧なのだ。
著者1人の1つの視点・1つの人生しか歩んでないないはずの1人の人間がこんなにも緻密に複数の人間の感情を描写していることに驚きを隠せない。
読んでいて、ひとりひとりの性格に引き込まれていく。
主人公の世間慣れした友人の視点もすごいな、と感心する。
物語の展開、というよりも、言葉の選び方、心理描写、視点、に感心しっぱなしだった。
2025年2月23日
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ルポ 誰が国語力を殺すのか (文春e-book)
- 石井光太
- 文藝春秋 / 2022年7月27日発売
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「国語」というと、「読み書き」のイメージが強いが、この本は「自分の感情をどのように言語で表すか」という「会話」の「国語力」がメイン。
(「AIvs教科書が読めない子供達」を読んだイメージで読み始めたが、どちらかというと「ケーキの切れない非行少年たち」という本に近い)
冒頭「ごんぎつね」の授業。兵十の母親の葬式にて。「大きな鍋で何かを煮ている」という文章に、子供達は「兵十の母親を煮ている」と多くが誤読した授業風景が紹介さてている。
気になって「ごんぎつね」を読み返してみたのだが、煮ているのは葬式に振る舞う料理だと示唆する文面は一切なかった。つまり誤読は読解力の問題ではない。著者曰く「常識」の問題だということだ。本書において「国語力」は「読解力以前の問題」ということを問題提起している。
家庭生活に恵まれなかい子供達は、自分の感情を言葉にできないし、言葉にする前に感情を理解することすら乏しい。最近の「不登校児」は不登校になった理由を自分でもわからない、と言う。
家庭で「ある程度の国語力」が身につけられない子供にどのような国語教育をするのか。
取材先の先生達は「ゆとり教育世代から国語力が低下した」という。著者は、国語の時間が変わらないのに、「IT」「国際教育」などさらに様々な教えることが追加されるため深い理解を育む前、表面的な知識ばかりが詰め込まれる問題点を指摘する。
学校の国語教育、自分の読書体験など、身近なことなので、自分の学校教育の経験や家庭環境などを思い浮かべながら読み進めた。
2025年2月23日