陰翳礼讃・文章読本 (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2016年7月28日発売)
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感想 : 33

2021/2/13

【陰翳礼賛】
日本人の美意識は翳にあると。なるほど、以前ほのかな灯りに照らされた茶室を訪れた時に感じた妙な美しさはこれか。ただ経験不足がゆえに、それ以外に谷崎が言う能や女が醸し出す翳の美に共感することはできなかった。

僕は(日本の中途半端な)西洋文明に染まってしまっているのだろうか。谷崎は「東洋人は己れの置かれた境遇の中に満足を求め、現状に甘んじようとする風があるので、暗いと云うことに不平を感ぜず、それは仕方のないものとあきらめてしまい、光線が乏しいなら乏しいなりに、却ってその闇に沈潜し、その中に自らなる美を発見する」と言う。

なおも物質主義が支配する令和時代において、「現状に甘んじ」る必要はないため、日本特有の美意識が損なわれるのは当然の帰結だろう。とは言え日本人の美意識は潜在的に皆に宿っているはずで、京都や鎌倉が日本屈指の観光スポットになってることからも明白。

今一度、翳に着目して自分の美意識に自覚的になった方が良さそうだ。


【文章読本】
谷崎は初めて読んだのだが、こんなにも流麗な文章を書くのかと驚いた。

これは文章と切っては切り離せない生活を送っている限り、みなが読む価値があると思う。ツイートをするときも、メール文を作成するときも、本を読むときも、こうやってブクログに感想を書くときも、あらゆる場面で活きてくる助言が書かれている。簡単に言えば、日本人は国民性としておしゃべりではない上、文法の構造上の問題から、文章はなるべく分かりやすく簡潔に書け、ということ。

これについて谷崎は古典を引用しながら説明する。古文は受験生の宿敵の一つだが、その理由は徹底的に装飾を避けられているところにある。雄弁に語ることが是とされる現代人にとって難しいのは当然だ。古文を英訳すると、装飾は不可避だそう。これは興味深い。

これによって自分がいかに無駄な装飾を苦心して付け加えているかに対して自覚的になる。

また、文章に対する感覚を研ぐためには、理論の勉強ではなく古来の名文を繰り返し素読して暗唱が肝要だ言っている。理由こそ違えど、小林秀雄も素読の大切さを説いている。
実朝や芭蕉など気に入った詩人の歌を暗記しないとなーと。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年2月14日
読了日 : 2021年2月13日
本棚登録日 : 2021年2月13日

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