日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか? (星海社新書)

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  • 星海社 (2013年4月26日発売)
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感想 : 34
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秀逸である。著者が大学院在学ということで、独特の学生くささな文章の書き方と物の見方はあるが、現状問題の把握と提起においてその特性がよい意味でプラスに如何なく発揮されている感がある。
日本の労働相談の現状、法律下では個々人が意見をあげて主張していって権利を勝ち取らない限り守られないこと、経営者と労働者は非対称な力関係であること、日本の現在の労働状況が形成された歴史的背景(イギリス産業革命)、内容は多岐に渡るが他の類書では見られない視点から問題を浮かび上がらせ俯瞰できる。このように法律が機能のしているとは初めて知り驚いた。
そして、現在日本の現状は、「日本型雇用の合意は、日本の労働力の「商品化」を著しく勧め、もはや労働者側も経営者側も、これをコントロールすることができなくなっている」(p214)。また、「富裕層にとってしか利益にならないことが、就職できない学生(その他、苦しい状況の人も含むであろう)と結びつき主張される」(p275)という矛盾すべき驚くべき姿を見せている。これを打破していくには、「普通の人たちの利益の分断」の解決が必要だというのが、著者の見方である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 30 社会科学
感想投稿日 : 2013年9月28日
読了日 : 2013年9月28日
本棚登録日 : 2013年9月28日

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