ぽんきちさん フィクション   読み終わった 

「100万回生きたねこ」は、もしかしたら日本で一番有名なとらねこかもしれない。
何しろ100万回生き、100万回死んだことがある、立派なねこなのだ。
そうしてみんながとらねこに夢中になっても、誰のことも愛さない。
そんなクールなねこなのだ。

本作は、「100万回生きたねこ」に13人の作家・詩人・画家が捧げるオマージュである。
100万回生きたねこだから、100万の人生(猫生)があってしかるべき。
稀有なとらねこの100万分の1の生涯を描き出して見せましょうぞという作品集。
その着眼点やよし。

・・・なのだが、うーん、発想はよかったけれど、一番よかったのは、そのアイディアだったんじゃないかな、といういささか肩すかしな感じが否めない。
このアイディアで、売れっ子さんも揃えて、え、これなのか・・・?というところだ。辛い言い方をすれば。

それぞれのお話はちょっとひねりのあるものもあって、悪くはない。けれど、ちょっと小粒じゃないかな・・・?
江國香織さんのは本歌の趣意を一番汲んでいる雰囲気。でもちょっと薄味。
角田光代さん、前半の束縛のねっとり感は薄ら寒さを孕んでさすがな感じだけど、相手がねこなだけに、後半は焦点が呆けたように私は感じた。
町田康さんのはおもしろいけど、寓話めいていすぎるし、そもそもこれ、ねこ関係ないしっ。いや、先刻承知で書いていらっしゃるのでしょうけれど。
綿矢りささん、発想がかっ飛んでいておもしろいけど、トーンが明るすぎ・軽すぎな感じが。
どれもそれなりにおもしろかったけど、どれもそれなりに少しずつ違和感があったと言うか。すとんと胸に落ちなかった。
3作を迷いながら上げると、今江祥智さん、唯野未歩子さん、谷川俊太郎さん(こちらは別格か・・・)の作品、かな・・・? 岩瀬成子さんも機会があれば別作品を読んでみたいかな。

1つの作品を軸に据えて、いろんな作家さんの競演を読めるというのは、一粒で二度おいしいようで、実はなかなか難しいのかもしれない。限られた字数で、持ち味を生かしつつ、オリジナルも匂わせるというのは、結構な離れ業なのかも。

いっそ、100万人の作家さんを集めたらどうだったんだろう。それはそれでおもしろいような。いや、無理だけど。

冒頭のそれぞれの作家さんが「100万回生きたねこ」との関わりを語るショートエッセイがおもしろい。

レビュー投稿日
2015年9月20日
読了日
2015年9月20日
本棚登録日
2015年9月20日
2
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『100万分の1回のねこ』のレビューをもっとみる

『100万分の1回のねこ』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする