数学と語学

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  • 2012年9月12日発売
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寺田寅彦の随筆。
語学と数学に関連はあるのだろうかというお題だが、明確に答えを出しているわけではなく、どことなく思考を遊ばせている感じのある読み物である。それはそれなりにおもしろい。

曰く、学生の試験結果を見ていると、語学と数学の試験の点数にはあまり強い相関はないのだが、それでも、どちらかに偏っているよりも、同程度にできる学生の方が多いように感じられる。成績のよい悪いとはそういうものだろうと言ってしまえばそれまでだが、もう少し深読みして、2つの学問の間に共通点はないのだろうかと考察してみる寅彦先生である。

いずれの学問も、個々の要素があって、それを記号や符号で表し、「文法」的なものにしたがって配列されることで発展がある。
何らかの前提を置いて、それを論理にしたがって分析し、分析したものを組み立てていく点では似ているともいえるが、言語の場合はより複雑で多義的であることから、結論も一本道ではなくなる。数学の場合には、ひとたび糸口を掴まえたらそれをたどって筋道を続けていくことが可能である。だがその筋道に乗らないものを見落とす可能性もあるかもしれず、そのために自然現象のうちあるものを無視したり捻じ曲げたりすることがないとも言えない。
数学も語学も真に身に付けるには、一朝一夕ではならず、修練し、我が物とすることが必要な点も共通である。

末尾に、そもそも寅彦先生がこの一文を書き始めたのは、語学は得意だが数学が苦手、数学は出来るが語学は今一つ、といった学生に、いやいや、そうは言うけれど、どちらも似ている面もあるよ、と言いたかったためである、というような記載がある。そこから始まって、思考があちこちに飛んでおり、まとまりには欠けるきらいがあるが、まぁこうしたところから思わぬ発見があるものなのかもしれない

ところどころにカタカナ表記の外国語が出てくる。このあたりはまだ訳語も定まっていなかったのだろうか。
「コーレレーション」(「相関」にルビとして振られている:原語はcorrelationだろう)、「プロバブル」(=probable)、「デヴェロープ」(=develop)あたりはわかるのだが、さて「ベグリッフ」というのがわからない。少し検索したところ、ドイツ語で「概念」を表すBegriffであるようだ。コンセプトならわかったのにな(^^;)。

最初の出典がよくわからないが、学生向けに書いたものだったのだろう。学徒ならまだしも、一般庶民にはなかなか取っ付きにくい一文であったかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2019年1月6日
読了日 : 2019年1月6日
本棚登録日 : 2019年1月6日

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