おじいさんのランプ

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本棚登録 : 61
レビュー : 14
著者 :
ぽんきちさん 児童書   読み終わった 

「ごん狐」で知られる新美南吉の童話。1942年発表。南吉が結核のために29歳で世を去る前年の作品である。

舞台は南吉自身の故郷でもある岩滑(やなべ)新田。
東一君という少年が友達と遊んでいて、倉で古いランプを見つける。それはおじいさんの思い出のランプだった。
おじいさんは東一君にランプの由来を語って聞かせる。

日露戦争の頃、13歳であった巳之助(=おじいさん)。天涯孤独だった彼は、人の手伝いをして日々を凌ぎながら、どうにか身を立てようとしていた。
あるとき町で出会ったのがガラス製の美しいランプだった。
それまで人々は夜は暗い中で過ごすか、少し贅沢な家でも行燈を使う程度だった。
まばゆいランプに文明開化の兆しと商機を感じ、心を躍らせた巳之助は、ランプ屋に頼み込んでランプを1つ、卸値で売ってもらう。
そこから巳之助の挑戦が始まった。

近代の訪れとともに、街にランプが灯されていく。巳之助の商売も軌道に乗る。
だがしかし、ランプがもてはやされる時代は長くは続かない。次にやってくるのは電気の時代だ。あちこちに電信柱が立ち、電線が張られるようになってくる。
せっかく商売もうまく行ったのに、と落胆もし、電気を恨みさえする巳之助だったが、時代の流れは止められない。
巳之助は1つの決心をする。

さて、巳之助の決心がすばらしいものだったのかどうか、現代では少しぴんと来ないところもあるのだが、激動の時代を、世をすねることなく渡り切った、1つの理想の形であったのかもしれない。
何にせよ、孫と語らう穏やかな日々を手に入れたのだから。

冒頭では、おじいさんが孫たちに「電信柱で遊んで来い」というシーンもあって、ちょっとした伏線になっている感じである。東一君がおじいさんの話を聞くときにする癖の描写も、実際にこんなことをする子もいるだろうとほほえましい。
南吉はお話をより読みやすく、親しみやすくしようと、いろいろ小さな工夫を重ねていたんだろうなと思い、その早逝にふと胸を突かれる。

レビュー投稿日
2018年12月31日
読了日
2018年12月31日
本棚登録日
2018年12月31日
4
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