新刊の棚にあったので読んでみました。
かしわ哲さんって全然知らない方だったんだけど、読みやすくておもしろい。
気になる箇所がいくつかありました。
☆気になったぶぶん
離婚はふたりの問題ですし、フィンランドでは入籍しないで何十年もいっしょに暮らしているカップルがたくさんいます。結婚だけがすべてではありません。
自分の世界をしっかり持っている人は、大人です。
みんなとちがうのはすばらしいことなのです。日本人は『みんなちがってみんないい』とか『ナンバーワンではなくオンリーワン』とか口では言いますが、みんなとちがうことを、みんな恐れています。フィンランドでは、みんなとちがうことは誇らしいことなので、羨ましがられます。
学校中を敵にまわしても、いつもでよりそって、「あなたは間違っていない魔法」をかけてくれた人。空一面をオレンジ色に描いて先生やみんなからバカにされたときでも、「あなたの眼にそう見えたのならそれでいいんじゃない魔法」をかけてくれた人。ウザいキモい死ねの集中砲火を浴びて帰ってくると、「そんな学校なんかいかなくてもいいわよ逆効果魔法」をかけてくれた人。どんなにひどい態度でも受け入れてくれて、思いもかけない希望へと導いてくれて、ときにはいたずらで、ときには逆ギレして腹を立て、ときには困らせられたけれど、けっして裏切らなかった人。
夢野さん。あたいのおかあさん。
こころの中に悪を宿していない人間はいません。というより、人間は、悪いほうへと傾きやすい生きものです。放っておくとどんどん悪いことを考えてしまうのです。
邪悪なことまで願ってしまうほど夢野さんの愛は深い。
苦しいときも悲しいときもいつもいっしょなんて、めちゃくちゃ月並みなフレーズだけど、それはあきさんのこころのずうっと奥から湧き出てきた澄んだ想いだと、愛野はかんじた。どんなに上手なシンガーでも、この澄んだ想いにあふれた歌声の前では口を閉ざしてしまうだろう。歌に嘘は通用しない。この上なく美しくうたっても、こころの根っこが汚れていたら、聴く人のこころを揺さぶらない。
夢野「あなたがいい人すぎるから、あなたがすごく愛してくれるから、あたし、絶対誰にも渡したくなかった。だから自分の汚いとこなんか絶対知られたくなかったし、見せたくなかった。あなたはとてもまっすぐな人だから、あたしの中にある汚いとこを見たら、きっとショックで、いろんなことに絶望してしまうだろうと思った。いちばんこわかったのは、あたしを愛したことに絶望すること。あたしとはちがって、あなたはしあわせな家庭に、ほんと憎たらしいほど幸せな家庭に育ったから、人の裏側は見たくないのよね。どんなことがあっても人を信じたいのよね。だからあたし、一生懸命演じちゃった」
夢野「あなたは男と女が言い争う場面が苦手だから、あたしのことをなにも責めないで出ていったのよね。あのときあたし、いまみたいに素直に、自分の汚いとこを見せればよかった。そうすればあなたの気持ちも動いたかもしれないのに、バカみたい、あんなときでもあたし演じちゃった。それですごく後悔したのに、今度は、あたし、愛野に、おんなじことはじめちゃった」
夢野「だって、愛野ったら、あたしにそっくりなんだもの。あたしが一生懸命演じて隠していた部分を、愛野はそのまんまなんだから、もぅ、かわいくていじらしくて、死ぬほど愛するようになった。愛野が愛野のままでいられるように、あたし、また演じはじめちゃった。それがあたしのつとめだと思った。あたし、命をかけて演じようと思った。今度は後悔なんかしなかった。だって、愛野はあたしのすべてだもん。学校でどんだけいじめられても、ぜったい守ってみせるってじぶんに誓った。(略)だって、愛野がいなくなったら、あたし、あたし、この世界に、たったひとりで」
愛野「なに言ってるんだよぉ!あんたがどんなに汚れていても、超イヤな性格でも、あたいは、あんたのそばからぜったい離れない!あんたがいなかったら、あたいなんかとっくに、とっくに死んでたんだ。あんたがいたから生きていけたんだ。ふたりきりで超さみしかったけど、みんなにいじめられたけど、あんたがいたから、あたい、がんばれたんだ。あんたをおいて、あたいひとりでどこへ行けばいいんだ。あんたといっしょじゃない世界のどこへ、どこへ、行けばいいんだよぉ!」
- 感想投稿日 : 2010年2月1日
- 読了日 : 2010年1月31日
- 本棚登録日 : 2010年1月31日
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