宇宙の眼 ハヤカワ文庫SF (ハヤカワ文庫 SF テ 1-27)

  • 早川書房 (2014年9月25日発売)
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本棚登録 : 303
感想 : 10
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意外にも良心的な結末にちょっとビックリ(…ハッピーエンドですよね?)。
先日読んだ「発狂した宇宙」と並び多元宇宙の金字塔と評される本書です。どちらも現実と異なる世界に迷い込み、四苦八苦するという点では同じですが、「発狂した宇宙」における多元宇宙が無限にある宇宙のひとつだとすると、こちらは極端な考え方をする誰かの意識(しかも複数)に迷い込みます。また、「発狂した宇宙」で訪れる宇宙がSFオタクの空想ものだとすると、こちらは現実の主義主張の地続きの異世界が舞台。だから甲乙つくわけではありませんが、楽観的に読み進められた発狂した宇宙に対し、不安と疑心がつきまとう本書でした。

読み終わって改めて思うことは、ディックの作品ってやっかいだなぁということ。大雑把に物語を掴むことはできるのですが、細かなところで「なんでこんな展開?」と思うことが多くて、腑に落ちない。表面の物語に隠れたメッセージの存在を察知するのですが、どうも要領を得ない。まぁ単に読解力がないと言われればそこまでですが、やっかいだなぁと思うことしばしば。短編は解りやすいんですけどね。とはいえ、こんな悶々とすることも含めて、ディックの作品に漂う魅力は間違いなくて、だから周期的に彼の作品を読みたくなるんですねぇ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2015年1月17日
読了日 : 2015年1月14日
本棚登録日 : 2015年1月14日

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