室町~明治期までの妖怪絵巻15本を、多数の図版と共に紹介する本。本書は妖怪絵巻を「百鬼夜行する妖怪」・「物語絵巻の妖怪」・「妖怪図巻の妖怪」の三つのテーマで分類し、それぞれの抄録をフルカラーで掲載している。抄録とはいえ、妖怪絵巻をフルカラーかつ文庫本サイズで見る事が出来、また掲載されている絵巻も『百鬼夜行絵巻(真珠庵蔵)』や『化物づくし絵巻』といったメジャーなものから『百鬼夜行之図』、『大石平六物語絵巻』などマイナーなものまで取り揃えている点は嬉しい。巻頭の日中美術史家による日中妖怪画の比較をテーマとした対談も興味深かった。
但し本書には幾つかの問題点がある。本書は妖怪絵巻に登場する妖怪たちの名前も掲載しているのだが、その中には元の妖怪絵巻に無い名前(恐らく編者が独自につけたもの)が多数見受けられた。また、巻末に収録してある「妖怪カタログ」では、「ぬらりひょんは妖怪の総大将」などといった近現代の創作設定が妖怪の解説に使われている(参考文献に水木しげる氏の著作があるため、恐らくここから引いたものと思われる)。
その他、巻頭の対談において挙げられている作品の図がすべて掲載されていない、「全巻」と書いてある絵巻が実は抄録、といった点が不満だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
妖怪
- 感想投稿日 : 2013年1月12日
- 読了日 : 2013年1月12日
- 本棚登録日 : 2013年1月8日
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