心的外傷と回復 〈増補版〉

  • みすず書房 (1999年11月26日発売)
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感想 : 28
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 本書は性的及び家庭的暴力の被害者を相手とする著者の、臨床及び研究の二十年間の果実であり、あらゆるトラウマの諸相とその治療への方向性を具体的に示している。著者はフェミニストであるとともに、非常に優秀な学者かつ臨床家である。
 第一部は、外傷的事件への人間の適応のスペクトルの輪郭と範囲とを書いている。特に家庭内暴力と児童虐待について詳しく記載されており、長期反復的虐待の生存者に見られる心理学的障害に「複雑性外傷後ストレス障害」という新しい診断名を与えている。
 第二部は、被害後を生きる者にエンパワメントを行い他者との新しい結びつきを作る、回復の三段階について、順に解説している。各段階にいる当事者の事例が豊富に記載され、トラウマ体験者の回復過程が具体的に伝わってくる。
 PTSD治療にかかわる者だけでなく、トラウマを受けた人、ストレスによって無力化されている多くの人にとって、様々な指針を与えてくれる一冊。

 400字の紹介文ではとても説明しきれないほど、質・量ともに重厚な一冊です。読んでみるとトラウマに関する“バイブル”と呼ばれている所以がよく解ります。特に、虐待&DV被害者にとってとても参考になるものだと思います。
 サバイバーにも支持されていますが、被害直後や抑うつ状態の強い時期には、ページ数も多く、難解で専門的であるため、なかなか読めないと思いますので無理をしないようにしてください。
 戦争参加帰還兵についての記載は、平和ボケしてしまっていて全く想像が及ばない点も多く、一度目以降は読み飛ばしてしまっていますが、レイプ後生存者と被殴打女性についての章は何度も読み返しました。私自身の回復にも役立っていてエンパワメントされ、気付きを得ることが出来る一冊です。
 性暴力被害者の支援者を名乗る人で本書を読んだことがない人がいれば、即刻読み、かつ“理解するよう”勧めたいです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: PTSD・トラウマ
感想投稿日 : 2018年2月11日
読了日 : 2018年1月22日
本棚登録日 : 2018年1月22日

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