こういう、トラやライオンが人間社会に姿を現わすお話、きっとたくさんあるのだろうけど、あまりに擬人化されてるのは好みじゃない。あるいはあまりに人間社会に順化されすぎてしまうパターンとか(「図書館ライオン」)。
その点本書はすごく良かった。
Sophieという女の子とお母さんがキッチンでお茶を飲んでいると(父は不在)、突然トラがうちを訪ねてきて、ありったけの食糧を食べ尽くして帰ってしまうという内容。
挿絵で母娘は微笑んではいるけれど、トラの眼がリアルに描かれていて、しかもあまり視線を合わせないので、人間たちまで食べられかねないという緊張感がずっと失われず漂っている。ここが良い。読む者をぐいぐいと引っ張っていく。
ついにトラが、
「おいしいお茶をありがとう。そろそろ行かなきゃいけないね」
と言って家をあとにするとき、すごくホッとする。
さて、トラが食糧を食べ尽くしたせいで、夕食に食べるものがない。お父さんも仕事から帰ってくる。
そこでSophieと両親はカフェへ外食に出かけ、結果的にちょっと特別な夜を過ごせました。おいしい食事とアイスクリームも食べられたし。という楽天的な展開がまた最高。
これだけでも十分。
が、Sophieとお母さんは朝買い物に出かけ、トラが次きたときのために「タイガーフード」を買ってやるのだ。ところが。
「でも彼(トラ)は二度と来ませんでした」
思わず拍手したくなった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
絵本
- 感想投稿日 : 2022年5月8日
- 読了日 : 2022年5月8日
- 本棚登録日 : 2022年5月8日
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