Extra Yarn: A Caldecott Honor Award Winner

  • Balzer + Bray (2012年1月17日発売)
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感想 : 6
5

色彩が主人公の絵本。
どこを見ても「雪の白」と「煙突の煤煙の黒」だらけの町で、少女アナベルは「色とりどりの」編み糸の入った箱を見つける。

彼女は家に帰ってまず自分のセーターを編む。次に犬のマーズのセーターを。

「まだまだ糸はあまっている」(Extra Yarn)
これが本書のタイトルでもある。

アナベルは余った糸で少年Nateとその犬、学校の先生、クラスメートなどのために次々とセーターを編んでいく。

(冬でも半袖半パンの Crabtreeさんにはキャップを編んでやるところがちょっと可笑しい。)

こうして人間のからだに、さらには動物のからだに、しまいには植物や建物まで、色とりどりの服を着せられていく。

とそこへ大公が船に乗ってやってきて、アナベルから糸の入った箱を高額で買い取ろうとするが彼女は売らない。
それでも諦めきれない大公は、泥棒に箱を盗ませ、自分の城へ持ち帰った。ところが中身はからっぽ。窓から海へ箱を投げ捨てる。
(ちなみに大公の城は「黒」と「灰色」とわずかな「白」におおわれている。)
捨てられた箱はうまいこと流氷の上にのり、氷はアナベルの住む町へ流れていくのだった。

この、ページをめくるたびに変化していく色も楽しいのだけれど、もうひとつとても気に入ったところがある。

それは、なんどか出てくる、「けっきょく彼女にはできました」という表現。こうやってアナベルが飄々と不可能を可能にしていくところ。なんだか力がわいてくる。

「おまえなど二度と幸せにはなるまい」
と呪いの言葉を吐いた大公に対して、

「でも、けっきょく彼女は幸せでした」
とつづくところなんてすごく力強くてよい。

絵と文章が完璧に調和した絵本でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2022年2月17日
読了日 : 2022年2月17日
本棚登録日 : 2022年2月17日

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