ユリ・シュルヴィッツの波乱に満ちた人生を寡聞にして知らなかった。戦火のポーランドを逃れ、ロシアや小アジアを転々とし、パリへ、そしてアメリカへ。
本作はそんな過酷な状況のなかでの1エピソードが元になっている。
少年と母親は食べ物がなくて飢えているのだけれど、市場にでかけた父親はある日、パンの代わりに大きな世界地図を1枚買って戻ってきた。それで少年はひどく腹を立てるのだが……
というところから始まる、いわば誤配が予期せぬ学びを生むという話。
すてきな話なんだけど、シュルヴィッツ氏のほかの傑作「よあけ」「ゆき」「あるげつようびのあさ」などと比べてしまうせいでどうも見劣りがする気がしてしまう。
たぶん、あまり事実は書かないほうがいいのだと思う。作者の人生を知ったところで、それは彼のフィクションにふんだんに滲みでているから。
例えば「よあけ」から滲み出るなんともいえないもの哀しさの理由を、知りたくなかったと思う自分もいる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
絵本
- 感想投稿日 : 2021年12月3日
- 読了日 : 2021年12月3日
- 本棚登録日 : 2021年12月3日
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