三人称とはなるほど、小説の語りがそれらしく成立するための制度にすぎなかったのか。またいわゆる一人称はそうして三人称が制度化される前段階のものだったようだ。しかし映画のカメラを考慮するなら、一人称と三人称との境界はいったいどこにあるのか。世界を見る目。ただそのことだけを気にするならば、どちらも同じことではないか。
本作では、制度以前の、原初的な「私」、もっとぶよぶよとして生々しい、あらゆる矛盾を含んだ(しかしそれは矛盾ではない)「私」へとたちもどる試みを、小説の「新しさ」ととらえている。つまり結論は、新しい小説は、じつは全然新しくなかった、ということを言っている。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
エッセイ
- 感想投稿日 : 2017年11月24日
- 読了日 : 2017年11月24日
- 本棚登録日 : 2017年11月20日
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